「素人」か「アマチュア」か(2)

2010年12月17日 22:17

 前に、 「『素人』か『アマチュア』か」という記事を書きました。
 趣旨は、「素人そば打ち‥」というと技能未熟者と呼ばれているような気になるが、「素人そば打ち大会」などと言う場合の素人とは非職業人のことであるから気にする必要はないし、ことさらに英語に言い換えようとするのは不適当だ、というものでした。
 さて、先日、アマチュアの語源を書いた記事にぶつかりました。
 日経新聞に掲載されたコラムで、東洋英和女学院学長(元東大教授)村上陽一郎という方が書かれたものです。

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 アマチュアという単語は日本語にもなってしまった。素人という意味である。対立する語はもちろん「プロ」(プロフェッショナル)で、そのことを職業としている人を指す。昔は、プロ野球を「職業野球」と呼んでいた。
(中略)
 しかし、アマチュアというヨーロッパ語(英語)の、もともとの意味は、「素人」ではない。ラテン語の最もポピュラーな動詞の一つ「愛する」(amo)の派生語だから、「愛する人」が語源だろう。フランス語の「恋人」に相当する「アマン」は、まさに原義そのものになる。要するに、そのことが好きで好きでたまらないからやる、それがアマチュアの本来の姿である。因みにモーツアルトのミドルネームはアマデウスだが、デウスは神だから、神を愛する人か、でも彼の場合は神から愛された人なのかもしれない。
 そうだとすれば、いわゆる「プロ」のなかにも「アマ」はいて当然だし、逆に「アマ」でない「プロ」は不幸なことにもなりかねない。
(後略)
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 なるほど、アマチュアとは「○○を愛する人」という意味なのですね。
 してみると、本来、アマチュアの訳語としては「素人」よりも「愛好家」という語のほうが適当のように思われます。

 多分、アマチュアという英語が日本に入って来た頃、訳語を当てるに際して、本来の語義から「愛好家」という言葉が新らしく作られたのだと思われます。

 一方、「素人」という言葉は、「玄人」という言葉に対置する言葉として古くから存在していたのですが、この言葉はアマチュアの訳語としてそのまま使用されなかったように思われます。つまりこの時点では、アマチュアと素人は同義ではなく、「素人」には別の意味があったからです。

 ネットで、「素人」の由来を調べてみますと、
 【江戸時代に出版された、役者評判記という書物には、「吉」の文字の数で役者の品定めがしてあり、その文字が黒い役者は、白い役者より格が上でした。花街でも、お白粉を塗りたくって、お客の相手をするしか能のない女のことを、「白人」と呼んでいました。これが、経験不足のただの人を意味するようになり、「素人」と書くようになりました。「玄人」は技芸に熟練した人や専門家のことをいいます。今でも、「黒人」と書く場合もあります。】
 と書かれていて、素人とは「低技能者」を指すようです。

江戸の粋なお兄さんの台詞に「このとーしろめぇ。」というのがありますが、これは、「この非職業人め」というのではなく「この、なんにもできない奴めが」ということなのです。
 ということで、もともと「素人」には非職業人(ノンプロ)という意味合いはなかった(薄かった)ようです。

 以上のように、最初は、アマチュアと素人という言葉には明らかな違いがあったのですが、いつのまにか、「アマチュア」が本来持っている「愛好家」という意味合いが弱まり、「素人」には無かった「非職業人(ノンプロ)」という意味合いが強まって、徐々に両者が接近して、ついには合体してしまった、ということのように思われます。そして、現在はほぼ、素人=非職業人(ノンプロ)、玄人=職業人(プロ)という整理になっているようです。

 ここまで書きながら思いついたのですが、そういえば、社会人野球はかってノンプロという別称が用いられていました(最近はあまり聞きませんが)。「素人野球」なんて言っておりませんで、あえてその言葉を避けたように思われます。

 というのは、やっぱり、日本語としては本来的に「低技能者」という意味である、というのが我々の感覚として強く残っているからなのでしょう。

 では、なぜ「素人そば打ち‥」には素人を使ったのか。
 なぜ、「社会人そば打ち」とか「アマチュアそば打ち」とかしなかったのでしょうか。

 それは、「そば」という日本的な語感との組み合わせが良いということが第1にあって、(今は)素人という言葉にもアマチュア(愛好家)という意味合いがあるじゃないか、という若干の妥協があったからではないでしょうか。

 なんだかえらく長たらしく、分かりにくい文章になりましたが、私の結論は、やはり、現行の「素人そば打ち‥」でOKじゃないか、ということです。


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