手打ち蕎麦を精神医学からみると

2010年07月30日 22:44

 標題は、「NPO法人蕎麦ネット埼玉」主催による「第14回手打ちそばアカデミーinさいたま」において行われた講演のタイトルです。
 講師は、蕎麦ネット埼玉の会員で全麺協三段位、精神科医の小野先生。

 なかなか面白い講演でした。
 内容について、私は次のように理解しました。
①「蕎麦を打ったり蕎麦を食べることで病気予防ができるか」について
 ・手の操作が多く求められる蕎麦打ちは、痴呆症予防に効果があり得る。
 ・蕎麦がセロトニンを含んでいるからと言って、その経口摂取によってうつ病防止に効果があるかは大いに疑問。
②「積極的な生き方の是非」について
 ・世間一般に、競争的、野心的、精力的、挑戦的‥な人材が求められているが、これが「うつ」をはじめとする精神のアンバランス状態を大いに助長している。本来、人それぞれであり、それぞれの分を自覚した生き方が大事。

 なかでも面白いと感じたことを2点ほど挙げたいと思います。

 一つは、「蕎麦にはセロトニンという、不足すると「うつ」になるといわれている脳内物質を多く含むから、大いに食べるべし」ということが言われていますが、それに対する精神科医としての反論でした。
 お話では、食物による摂取によって必要量を脳内に取り入れることができるというのは、いくつかの理由から大いに疑問であるそうです。最近、テレビショッピングなどで膝の痛みに効くというヒアルロンサンなるものも同様だそうでして、経口で必要量を患部(膝)に到達させるためには、致死量を摂らなければならないのだそうです(笑)。通常は患部への直接の注射によるのだそうです。

 また、これに関連するのですが、プラセボ効果という言葉も面白かった。
 プラセボ効果というのは、偽薬でも患者が効くと思い込めば効く場合があるという状況を指します。「病は気から」という言葉がありますが、気持ちの持ちようで病気も良くなる、というあれです。即ち、うつ病患者がポジティブ思考をするトレーニングすることでうつ病も直る、ということにも通じるわけですね。
 ということになると、ちょっとひねくれた考えですが「蕎麦を食べることでセロトニンが多く摂取され、うつ病になり難くなるのだ」と信じることで、プラセボ効果によって幸福感が多少は大きくなるのかもしれません。

 もう一つおもしろかったのは、世間一般で今、大きな価値であるとされている、モーレツ社員的な生き方についてです。

 段位認定制度が一つの例ですが、それに限らず我が国では、ありとあらゆる局面において、競争的、野心的、精力的、挑戦的‥な姿勢というのが何よりも大事なこととされています。
 社会においては勿論のこと、家庭における幼児教育からはじまって学校生活においても、常に追い立てられるような環境に置かれ続けている訳です。人間は多様ですから、本当はこのようなことに適応できないという人が、ざっくり半分くらいはいるはずで、このような方は大変な目にあっているわけです。
 ここに精神疾患の種が芽を吹くことになります。

 こういう競争的価値観がどこから来ているのかという点について、興味が湧きます。
 思いますに、この観念が増長された時期というのはごく近年、戦後復興期~高度成長期ではないでしょうか。それ以前、特に江戸時代などでは、固定された身分制度の中で、分に応じた生活を楽しむというライフスタイルが維持されていました。その枠の中で、人々は不要な競争に身をやつすことなく、様々な文化を発達させたのです。蕎麦の文化もその中の一つですね。
 いずれにせよ、人々は、ゆったりと流れる時間のなかで、それなりの生活を楽しんでいたように思えます。うつ病などなかったのではないでしょうか。
 それが、戦後大きく変化しました。
 戦後の、いわゆる占領政策というのは日本に大きな害毒を恣意的に流し込みましたが、その他にもさまざまな不具合をもたらしたのですね。
 
 江戸の生活に戻ることはできませんが、蕎麦打ちという当時の人との共通の行為のなかに、ある種のゆとりを感じたいと私は思うものです。
 でも、段位認定試験で、「40分以内に掃除まで終わりなさい」とか「もっと早く、もっと早く」などと急かされるのには閉口しないでもないですが、それは単なる一種のゲームであると割り切って、これはこれで楽しみたい、とそういう理解をしています。

こうして、私は、四段を目指します! 



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