包丁の話(第10回手打ちそばアカデミーinさいたま)

2009年10月28日 00:09

 岡安鋼材株式会社社長である「岡安一夫氏」講師による包丁についてのお話でした。
 ただし、我々が期待した蕎麦包丁にまつわる直接的な内容ではなく、どちらかというと「鉄材」に重心が掛かったお話でしたが、いうなれば、基礎的なものですから、その意味で大変興味深い、かつ有益な内容であったと思います。
 岡安氏は御徒町にある岡安鋼材の3代目だそうで、江戸っ子です。当日のシャツの柄も「かまわぬ」でしたから、そういうところに粋を感じておられるに違いありません。
 HPは↓。
 http://www.okayasu-kk.com/knife/index.html

kousi.jpg

 さて、当日の話は、
1包丁の種類
2鉄の種類
3砥石
4スパークテスト(実演)
 でした。

 以下、ざっくりざっくりと再現します。

■包丁は大きく分けると2種類。
 「全鋼(オールスティール)」と「付け鋼(はがね)」(鋼と地金の鍛造)。
 「全鋼」は洋食屋の牛刀、鋸など適用される。(作るのは比較的容易だが)狂いやすいという性質がある。スプーンやフォークも全鋼だが、こちらには焼きが入っていない点が牛刀などと異なる。ちなみに、鋸に焼きを入れる場合は、狂いを避けるために5,6枚重ねて熱処理をする。
 「付け鋼」は、地金(ねずみ色の部分。炭素が0.0025%以下。地鉄ともいう。)と鋼を合わせたもの(「鍛接」という)。鋼の部分が刃として、先端に来るようになっていて、研ぎやすい(鋭利さを維持しやすい)という特色がある。

■鋼の種類(黄紙、白紙、青紙)について
 黄紙、白紙、青紙とは、日立金属(安来工場)が供給する鋼(安来鋼)を分類する際の製品に付した紙の色に由来する名称です。
 その区分は次のようです。

 (数値は、炭素含有率/クローム含有率/タングステン含有率の順)
・黄紙  (0.85-1.0/0    /0   )‥純粋炭素鋼
・白紙2号(1.0-1.2/0    /0    )
・白紙1号(1.3-1.4/0    /0    )
・青紙2号(1.1-1.2/0.2-0.5/1.0-1.5 )‥カンナに適。ただし割れやすい。
・青紙1号(1.3-1.4/0.3-0.5/1.5-2.0 )‥ノミに適。

 下に行くに従って、炭素量がが増し、青紙ではクロムとタングステンが加味されるということです。傾向としては、硬さが増し、従って刃持ちがよい(長持ちする)、ということになります。
 ただし、物事には利害得失が必ずあって、刃持ちが良い-研ぎ難い、刃持ちが悪い-研ぎ易い、という関係が生じます。万能なんてのはないということでして、どこを取り、どこを棄てるか、ということになる訳です。

■焼きいれ、焼き戻しについて
 平易な例で、概念を説明してくれました。
 雷おこしを例にすると、
・焼きいれとは、大粒のおこしが小粒の(目が詰まった)おこしになること。硬度が増す。
・焼き戻しとは、蜜を絡ませること。粘り(靭性(じんせい))が出て折れ難くなる。
 江戸時代は、焼入れまでしか行なわれておらず、大工などは、ろうそくの火であぶるなどして、表面の焼き戻しをおこなっていた。

■刃先の最適角度と切れ味、刃持ち
最適角度は21度といわれている。
この角度を同じにして、鋼材を変化させて切れ味と刃持ちを比較すると次のようになる。
     |青1号|スエーデン鋼|白紙 |玉鋼 |
切 れ |     |        |good |    |
刃持ち | good |        |   |      |   

 切れ味については、次のようなことが言える。
 マッチの軸をステンレスの刃と鋼の刃で切ると、ステンレスの場合一旦抵抗が生ずるが、鋼の場合は抵抗無くそのまま切っていける。

■砥石について
・砥石の番手は(キングの)1000番が一般的。これ一本で済ませる。(ということでしたので、あまり色々と悩む必要は内容です。
・砥石で研いだ後、砥石の臭みが残る。これは、酸化物であるから、さびの原因にもなるので、十分に水に晒すのが良い。
・防錆には、新聞紙が良い。油が適度である。油を使うのなら、医療用の椿油がよい。
・摩擦によってけっこう高温になるので、水を掛け続けることが必要。(組成が変化する?)

■サンドペーパによる研磨も可。ある鋏屋はサンドペーパを使う。
 使い方として、ガラスの平面を利用するのが良い。ガラスに水を敷いて、ペーパーを密着させれば、最良の平面が出来る。
 番手1500~1000程度の耐水ペーパーを使う。また、極端に温度が上がらるようであれば、水を掛けながら行なうのが良い。

 包丁を選択する場合、(なにごともそうでしょうが)相反する性質(利害得失)があるので、用途や、運用環境、好みなどを勘案して選択するのが良い、ということだろうと思いました。
 意外だったのは、サンドペーパによる研磨についての質問に対して、「それもいいです」と弾んだ声での回答があったことでした。
 私の考えでは、安い包丁でも必要な時に必要な鋭利さが確保できればよいのですから、常に研がれていれば良いように思いました。(高価な包丁でも、手入れが悪ければ、あるいは手入れがし難ければダメということです。)
 ということであれば、簡便に研磨の作業が出来ればよいわけですから、サンドペーパを使って安定したた研ぎができるようにしておけばよいことになります。包丁の相手は、非常にやわらかい蕎麦と木製の切り板ですが、後者を基準にするとしても、数回の切り作業の前後に軽く研げるような環境を作られればOKということだと思います。サンドペーパを使った簡易な器具があれば、高価な砥石や場所や時間や、あるいは更に高価な専門家に頼む作業も不要になるのではないかと思います。

 以下、スパークテストが行なわれましたが、細部省略します。
 火花の色や形で炭素などの含有成分、含有率が分かるというものです。

spark test





コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://mokuyokai.blog18.fc2.com/tb.php/3-619678db
    この記事へのトラックバック


    最新記事