延し棒の「しなり」について(しなりは必要ない?)

2015年11月17日 22:25

 カーボン麺棒を使っていて、「しなり」のことが気になりましたので、少し整理してみることにしました。
 今使っているカーボン麺棒は、しなりの量が小さい仕様になっています。当初は、しなりが小さいと、麺生地を思い通りに変形させにくいので、操作性としては良くないと思っていましたが、必ずしもそうではないように思います。
 以下の説明を分かり易くするために、2種類の麺棒、
しなりが非常に大きな延し棒(以下「A棒」)
しなりが全く無い延し棒(以下「B棒」)
 という極端な例を比較することで、しなりの必要性などについて考えたいと思います。

 さて、延し棒が接する麺生地側の状態を考えてみますと次の図のような3つの状態があります。図はいずれも断面図です。
151117-1.jpg
 生地(1)は、麺生地の中央付近に厚みが在る状態です。
 生地(2)は縁辺部付近に厚みが在る状態です。四つ出し以後の麺生地は、概ねこの状態で推移します。
 生地(3)は全体が平らになっている状態です。丸出しや本延しが、これに該当するでしょう。

 次に、実際に麺棒を当てた状態を見てみます。
151117-2.jpg
 図①、②のように、生地(1)、(2)に対しては厚くなった部分に延し棒を当てて、そこを押さえるだけですので、A棒、B棒に優劣はでません。つまり、しなりは関係ありません。
 なお、図②の変形として、図②’のような使い方(四つだし直後の操作など)がありますが、この場合も、A棒、B棒に優劣はでません。
 
 このように生地(1)、(2)に対する麺棒操作では、A棒、B棒の両者に差は出ませんが、差が出るのは、生地(3)のように、全面が平らになっていて、これを更に薄くしていこうとする場合です。
 この場合に該当するのは、「丸出し」段階、および「本延し終盤~仕上げ」の行程です。
 A棒、B棒では、図のようなイメージになります。
151117-4.jpg

 A棒の場合、しなりで押さえた範囲を、極端に言うと、えぐって行くような延し方になってしまいます。しかし、別の見方をすると、えぐった部分というのは、手を当てている狭い幅になりますから、(手を当てた)特定の箇所を変形をさせやすいということになる訳です。
151117-3.jpg

 B棒の場合、しなりませんから全体の厚みの均一性を保ちながら薄くしていくことができます(特に丸出しで効果顕著)。しかし、A棒のような操作性は期待できません。

 まとめると、次のようになるでしょうか。(メリット〇、ディメリット×)
A棒の場合
×ある幅で溝状になった薄い部分が発生するが、
イメージに近い成形ができる(=形状の操作をしやすい)

B棒の場合は、全体的に押すことになりますから、
均一の厚さの生地作りを追求できるが、
×局部の変形をさせにくい(=形状の操作がしにくい)

 、ということになります。
 それぞれ良し悪しがあるというところでしょう。

 但し、ここまでの記述は、「しなりが極めて大きいA棒」と「しなりがない(零の)B棒」という極端な例の比較ですが、(現実の)カーボン麺棒ではどうなのでしょうか。
 実は、しなりが「小さい」のでB棒に属すると思っていたカーボン麺棒でも、「小さい」なりにしなりがあり、それなりのしなりの効果があるようです。

 下の写真は、通常の木製麺棒の両端に物を敷いて(上)、その中央付近を押さえた状態です(下)。軽い力で、棒がしなっています。
151117-7.jpg

 下の写真は、カーボン麺棒で同じような操作を加えた状態です。(この場合は分かり易いように相当強い力で押さえています。)
 しなりの量は零ではなく、わずかであるが発生することが分かります。
151117-8.jpg

 この「わずかの程度」とはどの程度なのかということですが、本延し中にその効果を目視で観察できる、程度です。
 下の写真は、本延しの段階でして、中央部分を延そうとしているところです。
151117-5.jpg

 この状態から、下の写真のように、麺棒に中央部分に両手を置いて、麺棒を軽く加圧しながら転がすと、(この硬めの麺棒でも)生地に存在する(甘皮?等の)ポツポツの模様が、その中央付近だけ上方に動くのが分かります。つまり、こうすることで、しなりの効果を観察できます。
151117-61.jpg

 
 以上総括すると、
 ・しなりの効果を適用できるのは、延しの全工程の内、生地(3)のような限られた行程である。
 ・A棒とB棒では、「厚みの確保」と「形状の確保」がトレードオフの関係になる。(下記の私見を参照)
 ・カーボン麺棒程度の硬度のものであれば、相応のしなりの効果が期待できる。
 というところでしょうか。

 私見を加えると、
 当然ながら、麺棒の評価尺度(良否)は「しなり」だけではなく、他の機能も踏まえて総合的に判断する必要があります。
 また、過度のしなりを求めるのは、蕎麦打ちの考え方において、少し誤っている可能性がありますので要注意です。
 つまり、しなりがあったが良いというその心底に何があるかというと、生地の形状を縦横きれいに作りたいという一種の見栄?(又は自己満足?)がある可能性があります。その誘惑に駆られる気持ちは私もよく分かりますが、まずは厚みの均一性を求めることが第1であって、その次に、形状も綺麗になればそれに越したことはない、ということでなくてはなりません
 形ばかりを追いかけて、先端の縁辺部が薄くなって、中程がぽってりとした麺生地を作ってしまっては、完全アウトです。
 自戒も含めてですが、肝に銘ずべきことと思います。
 
 【参考;高橋氏の本延しの様子。】(2012.12.18高橋邦弘蕎麦会)
151117-9.jpg
 作業全体の効率という観点もありますが、縁辺部の凸凹を気にしていません。
 切り幅を決めた後は、厚さの均一性を目指して、ひたすら生地を南北方向にならしていけば良い訳です。
 この時、しなりのある麺棒である必要はありません。



 *事務連絡*
 21日~23日の間、日光市で行われる「日光そばまつり」に参戦します。オフィシャルサイトはこちら。 
 ブース15「北海道そば」で、3日間、カーボン麺棒を使って打っています。
 お越しの方、声をかけてください。


コメント

  1. sobakameo | URL | -

    そば打ちの麺棒

    1キロ打ちをメインに打とうと思い麺棒を新調したいと思ってます。
    麺棒を1050ミリを3本で揃えるか、1050ミリを2本、900ミリを1本で揃えるか悩んでます。人により打ち方も違いますからなんとも言えないところありますが、大は小を兼ねる、で1050ミリを3本が良いかな、と思ってます。
    本格的にそば打ちされてる方の意見をお聞きしたいと思ってます。
    よろしくお願いします

  2. ブログ主 | URL | G5Zeud3U

    麺棒の長さ

    「麺棒を新調」するということですから、現在使っているモノがあって、それは、
    ・1100mm×2本
    ・900mm×1本
    ということでしょうか?

     私個人的には、この組合せがベストではないかと思います。
    「1キロをメインに」されるそうですが、1.5キロ以上を打つこともあるだろうし、これこそ大は小を兼ねるということではないでしょうか。

     オーバーな言い方ですが、数百年の歴史を経てこのサイズが定着したのには、それなりの理由があるからだと思います。迷ったら、特別の事情のないかぎり、先人の知恵に従ったが良いと思います。

     以上が私の意見です。

     そういえば、高橋邦弘さんは、上のような一般的な長さの組み合わせではなかったような記憶があります。(理由は不明)
     貴方の場合の理由に興味があります。よろしければ参考のために聞かせて下さい。

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