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新タイプ麺棒(1) エンボス麺棒

2015年08月08日 10:59

 某日、今話題のエンボス麺棒について開発者自身による解説とデモを見聞する機会がありました。
 以下にその感想などを記します。ただし、なにぶんにも実際に使った訳ではありませんので、正しい把握ではないかもしれません。

150530b.jpg
エンボス麺棒(貝殻粉末が漆で塗り固まられている。かなりデコボコ。本体は桐。)

 今回、見聞した範囲ではなかなか面白いと思いました。
 一般に、生粉や、(つなぎが加えられていても)粗挽き粉等の場合、普通粉の二八の場合のような麺棒操作をしたのでは、しっかりと繋がった麺生地をつくるのは困難です。
 普通粉二八の場合ではグルティンが効いているので、猫手を主体とした、引き伸ばすような延しでもよい訳ですが、生粉や粗挽き粉の場合では繋がりが弱いので、これと同じような延し方をすると生地が裂けやすくなってしまいます。
 生粉や粗挽きの繋がりを強くする要素は、いくつかありますが、大きな要素は、「粉粒子間の距離」を小さくすることであると考えられます。こちらを参照
 このための具体的方策としては、あたかも生地を搗(つ)き固めるような麺棒操作、即ち、生地の表面に対してできるだけ直角方向から加圧するような麺棒操作を行うことが必要です。また、猫手ではどうしても、生地を引っ張る(引き摺る)力が生じるので、いわゆる平手(手で押しながら、ころころと転がすやり方)が効果的です。こちらを参照
 つまり、ポイントは、「①生地を引っ張らず、②上から加圧する」ということなのですが、これを徹底させたのがエンボス麺棒ということができると思います。

1 「①生地を引っ張らず、」ということについて
 エンボス麺棒で、いわゆる平手(ころころの延し方)を行えば、表面の凹凸が歯車のように噛み合っていますから、引き摺るような動きは発生しにくくなります。つまり、平手の延しが効果的に行えます。
150530c

2 「②上から加圧する」ということについて
 凹凸があることで、生地を効果的に搗き固めるような効果が得られるものと思われます。
 これは、次のように説明できると思います。
 エンボスの表面は、丸みを帯びた凸凹になっていますが、分かり易くするために台形で考えてみます。
150530d


 下図は、加圧が始まる時の麺生地の様子です。
 先端部分が麺生地に接し、圧力が加えられ始めています。「圧力」とは、単位面積当たりの力(㎏/㎝*2)のことですから、面積が小さくなる分、大きな力が加えられることになります。
150530e.jpg


 下図は、エンボス部分(凸部)が最後まで押し込まれた状況です。凸部の圧力が引き続き加えられていくと共に、凹部においては、奥の方が狭くなっていますから、ギュッと固められるような力が働きます。
150530f

 エンボス麺棒では、このようにして効果的に搗き固めるような効果が得られるものと思われます。
 (当日の開発者の説明では、麺生地に引っ張りの力が働いても裂けにくいのは、断面の形状があたかも蛇腹のような波型になっているので、伸縮が容易になるから、という説明がなされていました。)


 さて、この麺棒は他の普通の麺棒に比べてどういう違いがあるのでしょうか。
 定量的ではありませんが、次のような比較表が出来ると思います。評価項目には、他に色々とありますが、大きくは次のような2点ではないかと思います
150530g.jpg

 ※1 生地の繋がりの良さ
    エンボスに軍配が上がりますが、それがどれほどの差になるかというと難しいところです。実際、生粉や粗挽き等を、通常型麺棒によって上手に打てる人はたくさんいますし、通常型麺棒でも平手を多用すれば、より良い結果が得られます。確かに、つながりやすさは向上すると思われますが、(使っていないので確証はありませんが)少なくとも、「格段に」とか、「画期的に」とかいうようなレベルではないような気がします。

※2 作業性の良さ
 エンボス麺棒の操作は平手に限られます。慣れの問題もあるでしょうから、断定はできませんが、操作性としては難点があるような気がします。

※3 総合評価
総合評価は、「?」です。
  使い手の価値観、考え方によるところが大きいように思います。
  当日、開発者も、「これが絶対だというつもりはない。」というような説明があり、この麺棒は、そば道具についての「一つの新しい提案」ということだと思います。

  では、その評価は、いつどのようにして定まるのでしょうか。
  私は、数十年か数百年後ということになると思います。
  現用の通常型麺棒には、数百年の歴史があります。この間に延べ何百万人(?)の試行錯誤の結果が集約されて、今の形状になっている訳です。多分、今の我々と似たような人たちが、木は桧が良いとかイチイが良いとか、長さ、直径、磨き方、塗り、保管、操作…の仕方等々をあれこれと考えたことと思われます。そもそも日本人は好奇心向上心が旺盛な民族と言われますが、そういう(特異な)方々が数百年掛けて、あれやこれややっている訳です。ですから、エンボス麺棒というのは、いうなれば、朝起きた時に思いついて、お昼ごろに出来上がって、午後から使い始めた…、とそういう感じなのですね。

 今、エンボス麺棒を大変称賛する向きがありますが、こういう観点からはちょっと尚早ではないかと思いますね。
 エンボス麺棒も、現用の麺棒と同じような期間の試練を受けて後に、評価が定まることになるでしょう。


150530a.jpg


コメント

  1. そばヲ | URL | mQop/nM.

    昨年、私も千葉そば大学にて拝見しました。

    いつも通り精緻な分析で、その時のモヤットした部分が可成り明快に成りました。
    終盤のご意見の様に特許を取られる程のロジック(製法)で有っても、歴史が解決してくれそうですね、、、
    今年の千葉そば大学では、“Gショック一気加水”という技法を取り上げられておりました。
    昨年に引き続き、質問コーナーでは、阿部さんが果敢に質問されてました。
    昨年のは、道具有りきだったので自宅に戻って再現は出来ませんでしたが、今年のは手法でしたので遣ってみました、、、
    今後とも、記事愉しみにしてます。 そばヲ 拝』

  2. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    「G-ショック」は、ショックでした。

     今年の千葉大学、私も、阿部さんの右隣の席で見てました。
     そして、私も貰ったそば粉で一応やってみました、、、

    「G-ショック一気加水」のウリは次の2点にあるようでした。
    1 高い位置から水を落下させ、蕎麦粉に衝撃を与え(、その結果水を浸透?させ)ること。
    2 加水後、かき回したりせず、そのままの状態で時間をおくことで、粘り(とろみ?)を出させ、これをもって繋がりの良さの一助とさせること。

    1については、意味があるのかどうか疑問ですね。高ければ高いほど良いというような説明でしたが、落下した水は粉を巻き込んで跳ね散るだけのような気がします。
    (実行上極めて困難ですが)全ての粉粒を何らかの方法で鉢底に固定して、それらに対して精度よく水粒をぶち当てる、というようなことをすればなにか違いが出てくるようにも思えますが、1m程度の高さから落下させて、何がどう変わるのかなぁ。30㎝から落とす場合とで、どの程度の差が出るのかなぁ。

    2については、確かに水の掛った部分では「とろみ」が出て、つなぎになるような気がしますが、何分も置いたままにしておく、というのはどうなんでしょうか。かき混ぜる操作を行っても、同じような時間が経てば、「とろみ」に相当する「何か」が、ミクロの部分で発生し、同様の変化が進行するような気もします。つまり、混ぜても混ぜなくとも時間が経てば同じじゃないかなぁ、ということです。

     後日、同好の仲間3人(技量は5段、4段、4段)が、持ち帰った粉を使って、異なるやり方で打ってみました。

    Aさん=Gショック加水し、以下、講師と全く同じやり方。
    Bさん=Gショック加水し、以下、通常の捏ね、延し。
    Cさん=講師のやり方を無視し、通常の打ち方。

     さて、どれが一番、良い出来上がりだったでしょうか。
     Gショック法が不慣れということもあると思いますが、結果はCさんが最も良い出来でした。
     色々な意味で、ショックですね。

     いろいろとやって見ることは良いことだと思います。そういうチャレンジを否定するものではなくむしろ好ましいと思いますが、この何百年の歴史の中では、恐らく似たようなことが既にやられていると、私は思いますね。
     まずは、(何百年の)伝統の力に対する畏敬の念を堅持することが肝要と思います。その上で、おずおずと改善案を示す‥、ということでしょうか。

  3. そばヲ | URL | mQop/nM.

    「G-ショック」件 &、、、

    「G-ショック」件、お三方での検証 流石です。
    私は、講師さんの遣り方の再現にチョと自信も無かったので、ストレス云々を斟酌して自己流を織り交ぜ(?)て遣ってみました。Bの方の遣り方に近いのかな?結果は、加水が少し多めに成ったですが、麺体に迄は、こぎ着けました。。。
    実力から考えれば、馴れない遣り方で、粗碾き系のお粉。まあまあの出来でした。

    さて、新タイプ麺棒=エンボス麺棒件、
    分析の様に丸棒の加圧に比べ、複雑な方向で加圧が働き、且つ引っ張り方向での作用が無い興味津々な手法と感じてます。追跡してみたいです。。。

    では、所感にて そばヲ 拝』

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