四つ出し-対角線部分の厚みは?

2015年03月03日 21:48

 四つ出しは、操作中に状態を直接見ることができませんから、非常に難しい工程です。逆に、ここがうまく行けば後の作業が大変楽になるポイントでもあります。前にも、色々と書きましたが、もう一度、二、三考えてみたいと思います。
 まず、四つ出しの対角線部分の厚さについて考えてみます。
 四つ出しとは、下の図のように、丸出しをした生地を、南北方向(A)と東西方向(B)に延す作業です。
140304-1.jpg


 形状寸法は次のような関係になります。(以下√2=1.4とします。)
140304-2.jpg

 理論的には、丸出しの半径を「a」とすると、対角線の(半分の)長さは、図のように「 a×√2=1.4a 」になります。つまり、1.4倍の長さになります。(※実際の作業では、角(つの)部分に丸みがあったり、形が完全な正方形にはなりませんので、正確にはこれを適用できませんが、概要を把握するために、この前提でお話を進めます。)

さて、次が今回のテーマですが、厚さはどうなるでしょうか。
 厚さは、生地の容積が変わりませんから、生地が伸びた分薄くなります。 数値的には、図のように、長さが1.4倍になりますから、厚さは1/1.4(=約70%)になります
140304-3.jpg


 蛇足ですが、もう少し分かり易く説明すると次図のようになります。
140304-4.jpg

 上図の①は、丸出しした生地の一部で、1㎝の幅のテープ状になったものを表します。長さは10㎝、厚さ0.5㎝になっています。
 その右の図②は、このテープを南北に伸ばしたもので、四つ出しの対角線部分に相当します。長さが14㎝に伸ばされますが、容積は変わりませんから、厚さは元の70%の0.35㎝になります。

 ※この値は、実感と異なるという見方があるかもしれません。通常、角(つの)の端は薄くなっており、極端にはペラペラの場合があるからです。しかし、全体の平均をとれば、ほぼこの計算通りの値になっているはずです。(実際の測定結果の一例を最下欄に示します。)


 さて、上に述べた厚さは、対角線の線上に関することです。
 その線から左右に離れるとその距離に応じて緩やかに厚さは増加し、ついには丸出しの際の厚さになります。
 下図は、その状況を説明する模式図です。
140304-5.jpg
 
① 四つ出しをすると、Aのような形で角(つの)がでます。
② Aの形は曲線の上に乗っていますから、これを直線上に引き伸ばすと、A’のような富士山の形をしたグラフになります。
  aが一番伸びた箇所で、長さは半径の0.4倍です。(半径を足すと1.4倍です。)
③ この図は、生地の断面図です。
  ②のaが最も伸びていますから、当然 a’の箇所が最も薄くなります。そして、その厚みは0.7倍(1/1.4)です。
  A”は厚み(凹み)が距離によって異なる様子を示しています。
  実は、この形は A’と同じ形状であり、そして、それはまたAの形状と同じです。


  以上から、つぎのことが言えます。 
1 四つ出し操作を一方向に終えた時の対角線付近の生地の厚さは概ね7割になっている。
2 断面を見ると、厚み(凹み)の形状は、角(つの)の形(A)と同じである

  2については、非常に面白いと思いますね。
  四つ出しの角(つの)の形状は、四つ出しの際の加圧のパターンと同じであるし、更には、厚み(凹み)の分布の形と全く同じなのですね。
  四つ出し操作で、狭い範囲を強く加圧すれば、角(つの)は鋭くなり、より薄くなる、というのは直感できますが、その際の厚みの分布が角(つの)の形状と同じだというのは、とても面白いと思いませんか。



 【厚み測定の実例】 随分以前のことですが、「丸出しの厚み分布」と「四つ出しの厚み分布」を実際に測ったことがありました。
 計測は一回だけだったので、ブログに掲載するのは控えましたが、今回、そのデータを取り出して計算してみましたら、「7割」というのは比較的合っているようです。

1 厚み測定のやりかた
 下の写真のように、麺棒を利用して縦方向と横方向に10㎝間隔の目盛を作り、横軸の数字目盛を動かすことで、10㎝角のマス目毎に厚さが測定できるようにしました。
  厚さは「厚さゲージ」を使いました。
140304-6.jpg


2 丸出しの厚み分布  丸出しの直径は、正確に70㎝としました。
  手書きの数値が、計測結果で、単位は㎜です。平均値は「 4.79㎜ 」でした
marudasi_keisoku.jpg

  ぐっと眺めると、延しムラがありますねぇ(反省)。左上側と下側がやや厚くなっています。
  ちなみに、容積を計算すると1842ccです。1.5㎏で約1800ccというのを聞いたことがありますが、概ね合っています。


3 四つ出し(1方向終了時)の厚み分布  下図のような結果でした。
yotu_keisoku.jpg

 ・東西方向は「 108㎝ 」でした。南北方向は「約 70㎝ 」で、概ね丸出しの直径のままでした。
  (東西方向は、本来、70×√2=99㎝でなければなりませんが、9㎝近く大きくしてしまいました。)
 ・対角線に当たるDの欄(D1~D11)の平均値(実際の厚みの平均値)は「 2.89㎜ 」でした。
 
 一方、理論値は次のようになります。
  丸出しでの直径70㎝が108㎝になりましたから、伸び率は、
   108÷70=1.54 …①
  です。

  したがって、厚みの理論値は、
   4.79㎜(実測平均値)×(1/1.54)=3.10㎜ …②
  ということになります。

  ところが、実際の測定値は、「 2.89㎜ 」ですから、実際の厚みは0.2㎜ 程薄くなっている ということになります。


4 評 価
  理論より薄くなったのは、(理論の)計算では、四つ出しの角の丸みを無視して、二等辺直角三角形を適用したことによるものと思われます。(4項の①の値が小さくなります。)
  また、一回限りのデータですから、その他の誤差もでているものと思います。
  これらのことから、とりあえず今回は大ざっぱに捉えて、「一方向の四つ出し操作完了で、厚さは7割になる」と考えてよいと思いますがいかがでしょうか。

  目安として、「丸出しの厚5㎜」なら「四つ出し対角線の厚は3.5㎜に」、「4㎜厚」なら「2.8㎜」に、ということです。


 以上は、四つ出しの操作の一方向に関してですが、二方向目が加わるとどうなるでしょうか。
 次回以降に整理してみたいと思います。



コメント

  1. 麺殿 | URL | -

    とても参考になります

    実測値のデータはとても貴重なデータですし、結論の「7割」も大変参考になりました。
    絵を見てて思ったのですが、幅80cmの麺帯にするには直径80cmの丸出しをして四隅を90度にすれば済みで、とても簡単ですね。
    次回を楽しみにしてます。

  2. 管理人 | URL | G5Zeud3U

     本文中でも断りをいれていますが、いずれも「理論的には」という枕詞が入ります。実際では、荷重の掛け方によって理論値を前後します。
     でありますが、目安としては大いに参考になるのではないかと思います。また実測値は、随分前の一回限りのデータですので、あくまで参考値です。(延しムラがあるので恥ずかしいデータです。)
     
     高橋邦弘氏の蕎麦会の時、丸出しの直径について、打ち手(高橋氏の弟子筋)に聞いたら「80㎝」と言って、延し棒を当てて見せてくれました。
     その後の高橋氏の延しの作業中の幅も概ね80㎝で推移していましたので、四つ出しでは角を出し過ぎないような配慮がされているように思いました。
     四つ出しの作業を見ていると、パッパッと威勢が良いので随分伸びているように感じますが、かなり弱い力で押さえているということなのでしょう。

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