水の繋ぐ力(紛体工学入門セミナー)

2015年01月30日 23:09

 平成26年11月22日、東京ビッグサイトで「国際紛体工業展東京2014」という催し物がありました。
 粉に関するさまざまな工業製品の展示会ですが、その会場で、「紛体工学入門セミナー(副題;水中の粉のややこしさと面白さ)」という公開講座が開かれました。「水中の粉のややこしさと面白さ」という副題に惹かれて参加してきました。
紛体1

 私(と皆さん)の関心事項は「(生粉打ちで、)そば粉が水で繋がるとはどういうことか」という一点なのですが、当然ながら、ズバリの解答はありません。

 しかし、(ここにも書きましたが、)今回の講座を聞いて、「繋がる」というのは、要は「粉粒同士の付着」という問題に帰着し、この付着させている力は、主に「水の表面張力」である、とほぼ確信するに至りました。

 配布された資料は下のように「不許複製・禁無断転載」とされておりますので、興味ある箇所をかいつまんで記すと次の通りです。
セミナー資料

 まず、一般論としてですが、大きな物体の挙動は、重力や慣性力に支配されますが、微粒子では全く異なります。たとえば、パチンコ玉を壁に押し付けても、手を離せばポトリと下に落ちます(つまり「重力の影響を受けます」)が、粉(乾燥した微粒子)を壁に押し付けると、壁に付着したままで落ちることはありません。つまり、微粒子になると「重力の影響を受けにくく、他の要因(力)を受ける」ということです。

 この要因(力)については、ここにも書きましたように次の3つがあります。
① 分子間力(ファンデルワース力とも言われる)
② 水分による毛管力(表面張力のこと)
③ 静電力
z3

 
 水で繋げる蕎麦の場合は、①の「分子間力」による引力も存在しますが、それは恐らく比較的小さく、②の「水分による毛管力(表面張力)」による引力が極めて大きく関係します。この様子は、このイメージ図で示された「架橋液膜」という言葉が、そのことを端的に表しています。

 そして、これらの力に大きな影響を与えるのが「距離」です。
 粒と粒とが近づくと引き合う力は非常に大きくなり、少し離れるとそれは急激に小さくなります。(数式と図表がありますが、省略。)
 
 言い換えると、繋がりを強くするには、粉粒同士の距離をできるだけ小さくすれば良いということです。
 蕎麦を打つ際の具体的な操作としては、生地に対してより強く荷重を掛け、水回しの結果緩やかに繋がっている粒と粒との間隔を近づけてやる、ということになります。(こちら「水回し(7)とドウ」も参考にしてください。)

 そのためには、次のようなやり方(考え方)が適当であると思います。
■加水は、どちらかというと多目にする(のが有利である)。
■捏ねは、加圧を意識して行う。ちぎるような練りはほぼ無意味である。
■延しは、伸ばす(引っ張る)ようなやり方ではなく、上から押すことで薄くしていくという方法で行う。
丁寧、慎重に扱わねばならないのは当然。

 小麦粉が加えられた場合には、グルティンの網の目効果によって、蕎麦粉(デンプン粒)を絡めとるような状態になって繋ぐことが容易になりますが、生粉打ちなどの場合にはそれは期待できませんから上に触れたような水の表面張力をしっかり利用しなくてはなりません。


コメント

  1. 麺殿 | URL | -

    これだね

    http://sobajuku.net/isibikiya/tataki.htm
    石碾屋さんは叩いて水を浮かせると言ってたけど、粉同士の間隙が詰まった結果水が浮いてきたということだね。

  2. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    面(つら)を出す

     ご無沙汰をしておりました。
     早速、読んでいただいてありがとうございます。

     叩いて水が浮いてくるのを実際に見たことがありませんが、おっしゃるっ通り、粒同士の間隔が詰まるので水の居所が無くなり、外に出てくる訳です。(動画では、相当激しくやっておりますね。)
     いわゆる「面(つら)を出す」というのは、まさにこの現象です。
     面が出ることで、捏ねが完成したと見る訳ですね。

     http://mokuyokai.blog18.fc2.com/blog-entry-156.html
     ↑の「3項」にも触れていますが、おっしゃっていることを次回の記事で書こうと思ってました。
     実は、出すのは水だけではなく、「菊練りで、空気を出す」というのも同じようなことです。(詳しくは次回、まとめて。)

  3. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    蕎麦の打ち方

     元の動画を見ました。
     昔、一度みたことがあったのですが、改めて見ると興味深い点が2、3ありました。

     水回し
      「もみ込む」やり方の方が早いと言ってましたね。
      別の所で、プロの方の更級の打ち方を見ましたが、その方も「もみ込む」という手法を取り入れていました。実際、粉と水の関係がどのようになるのかイメージできませんが、グッと浸み込ませることができるような感じはしますね。
     よく分かりません。

     延し
      四つ出しの後に「手延し」をやってましたね。
      私も、ひんしゅくを買いながらですが、これを多用しています。
      ただし、このあと、しっかり加圧しながら延すという行程をやらなければなりません。

     延し作業の際、生地を手前に広げて行う
      最近、私もこの方法をとっています。(ただ、どういう訳かこれをやると、これもまた、ひんしゅくの目で見られます。)
      石碾屋さんもおっしゃっているように、前方に延していくときに、めが詰まりますので、効果的です。私たちの、基本的な体の動かし方としては、前方へ力を加わえていくような形をとりますから、好都合です。
      さらに、手前で作業することになるので姿勢が楽で作業がやり易い。
      その上、手前の縁部分の厚さを直接観察できますから、更に好都合です。
      これなのに、なぜか冷やかな目で見られてしまいます。
      どう考えても不思議に思います。
      (この件も、投稿記事に纏めてみます。)

     速さが第1
      石碾屋さんの、蕎麦打ち方針のひとつに入れておられるようですね。  大いに賛同です。


      
      この動画は、随分前に一度みましたが、(本の場合もそうですが、)時間をおくと新しい発見がありますね。

  4. ゴンゴロ | URL | -

    練について

    お久しぶりです。
    ご教示をお願いします。
    「捏ねは、加圧を意識して行う。ちぎるような練りはほぼ無意味である。」とありますがちぎるような練りというのがよく解りません・・具体的にはどのような練なのか教えてください。

  5. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    ちぎるような練り

     言葉で書けば「鉢の中に置いたドウの北側付近を、(右)手の平を用いて、北側に向けて、擦りこむようにして崩していくという練りのやり方」でしょうか。

     こうすることで、「生粉打ちの際などで、わずかに含まれるタンパク成分が持っている「粘り」を引き出せる」と、教えられたことがありますが、真偽のほどはよく分かりません。

     通常の練りのやり方を、極端にした形態であるという見方をしても良いと思います。であるとすると、小麦粉を加えている場合など、練りによって引き出されるグルティンの働きを、更に効果的に引き出すための方法という位置づけになりますから、グルティンの働きがそもそも期待できない生粉打ちなどの場合には意味のない操作であるということになる訳です。
     

  6. ゴンゴロ | URL | -

    お礼

    ご教示ありがとうございました。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://mokuyokai.blog18.fc2.com/tb.php/208-2e148c8e
この記事へのトラックバック


最新記事