小間板を押さえる力

2014年06月13日 10:59

読者の「佐○さん」からの「拍手」にメッセージがありました。
内容は、打ち粉の量と小間板の押さえに関するものでした。
直接ご返事が出来ないので、ここで一つの記事として、若干のコメントを致します。

(佐○さんから来着メッセージ)
いつも楽しみに拝見しております。今回も理路整然と説明されてありがとうございます、駒板の打ち粉は自分もどちらか迷ってます、確かにあまった打ち粉の量を見て多いのは格好悪いですが、やはり多いほうが安心して切れるような気がしてます。ある会で聞きましたら左手押さえが7-8キロで押さえているとの説明で試してみたがかなりの力です。私のは4キロにも満たないぐらいです、切の上達のヒントのなればと思いご指導お願いします。


1 打ち粉について
  一般に言われているのは、「延し」までは控えめに、「畳み」以降はやや多めに、ということのようです。
  大事なことは、生地の硬軟の様子を見ながら「必要最小限に」して、「用途を考えて使い分ける」ということではないかと思います。 (参)「打ち粉の役割」
  また、四つ出しを終わって生地を広げる直前に、以後の作業のしやすさを確保するために、台上に「コロ」用として打ち粉を撒くというのは、大変お勧めと思います。(参)「手延し(?)」

2 小間板を押さえる力について
  以前、高橋名人に「どのくらいの力で押さえるのか」と聞いたら、「しっかり押さえるのだ」という答えを頂いたことがあります。その「しっかり」の程度とは、下の名人の小間板を見ると分かります。小間板は、修行時代から数十年使い続けたものだそうです。指の跡がえぐれています。
140613d.jpg

  実際に秤を使って、いつもどのくらいの力で押さえているかを見てみると私の場合3kg~6kgぐらいの感じです。
  力一杯押さえて、10kg前後になってくると、押さえること自体が目的になってきて、意識が左腕側に強く働いてくるようです。左腕の筋肉もかなりプルプル感が出てきます。
140613aa.jpg



 「切り」作業における中心的な運動とは、『包丁を正確に「上下+左傾け」運動させること※』であると思うのですが、そのための体の使い方を考える際には、「①右肩から下の腕部分」「②それを除く体全体」、の2つに分けるのが良いと思います。「「包丁+腕」の動き」

 ①は、右肩を軸とした動的な筋肉運動によって、「上下+左傾け」運動を行います。
 ②は、そのための土台という位置づけです。したがって、筋肉を意識するような体の使い方は適当ではなく、静的に筋肉を使うことで体全体を固定するという感じにしたほうが良いと思います。(ただし、包丁の左への移動に合わせた体の微移動は必要です。)
 
 さて、そこで、小間板を押さえる力についてですが、できるだけ押さえる筋肉(筋力)を使わないようにした方が良いように思います。これは、力を掛けないということではなくて、体重(という力)を活用し、筋肉による力を過剰に使わない、ということです。冒頭に書いた「プルプル」感が左腕に出るようでは、「切り」の円滑性、正確性が阻害されるように思います。

 では、どうするかというと、(不肖、現在試行中ですが、)小間板に体を預けるような姿勢を作る訳です。
 こうすることで、小間板には、腕の筋肉による力と体重(による力)が掛ることになり、腕の筋力が軽減されます。
 以下の写真が良い参考になると思います。
140613a.jpg
 左わきを締める(体側に付ける)ことで、体全体がしっかりしますし、小間板への体重も乗りやすくなります。
 このように体勢を作ることで、脳味噌の働きを①の右腕の運動に割り当てることができやすくなるのではないかと思います。
 また、作業台の高さ(=踏み台の利用)も大きく影響しますね。やや高めの位置から作業ができるような環境設定をするというのは、体重の利用という観点から非常に大事なことです。
 次の写真は、高橋名人の後ろ姿です。 意外に左半身がかぶっているように見えます。
13aIMG_1747_201406131042212b3.jpg
 



 上に書いた、切りにおける体重の利用については、こういうイメージを持って体勢を作るのが良いということです。
 極端に走ると、しゃちこばった変な恰好になりますから要注意です。
 それぞれで、自分に合った体勢作りを試行錯誤してみてください。

【追記】
 押さえる力は、数値的には「3kg~6kg」のような感じですが、切りの作業中、この間の一つの値に一定している訳ではありません。切り始めの頃は、比較的弱く、最後の頃は強く押さえなければならないのはご案内の通りです。
 この強弱の調整を、すべて腕の筋力に任せるのではなく、必要な力の大部分は体重でまかない、腕の筋力は小修整用に使う、と考えれば作業が楽かもしれません。
 これは、電力の運用に似ていますね。
 基本の部分を原子力発電で供給し、昼間・夜間、春夏秋冬の調整を火力発電で対応するというやり方です。
 ちなみに、原子力発電について、私はより安全で安定的に供給可能なエネルギーが出てくるまでの当面の間は、大いに使用すべきと思います。

 話を戻して、
 「○㎏」は参考値ということにして、麺帯の状態を観察しながら、どのくらいの押さえ方をすべきかを体感的にチェックしながら練習することが大事と思います。「しっかり押さえる」のは、確かなようです。





おまけ
140613e.jpg
高橋名人の小間板を触らせてもらいました。
枕はがたがたで強く引っ張ると外れそうですし、あちらこちらに刀傷(包丁傷?)のような跡がありました。



コメント

  1. そばヲ | URL | -

    御意、されど、、、

    何時も拝読してます・・・
    本件、“御意、されど”なのです。
    1/切り出しと、最後の方の力関係の件。
     私は、駒板の端の方が麺体から離れる(浮く)か、切り板に付く辺りの力関係に、
     いまいち戸惑ってます。 
     仰せの『切り始めの頃は、比較的弱く、最後の頃は強く押さえなければならないのはご案内の通りで』とは別次元かもしれませんが、前述辺りに、困惑中です。。。
    2/それと、駒板上の指位置と力関係。
     親指>A 人差し指>B 中&薬>C 小指>Dとした場合、高橋名人のABラインが枕と平行に成っていないのに、先ず驚き。
     それから、全体の荷重のお話が出ていましたが、私は親指=Aがおろそかに成った場合、麺体が台形(先細りとか)に成ったりして、各指の配分等、心掛けている事有りましたら、ご教唆下さい。
    何時もながらの、投げっぱなしで、恐縮です・・・ そばヲ 拝』

  2. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    そばヲさま

    1 切りの最終フェーズ
     熟達者でも、苦労をする部分ですね。
     我々素人は、麺帯の左端まで切って行きますが、高橋名人などのプロは適当なところで切り落としています。商品にならないし、その端切れは次の玉に回せるし、(これを見越して)延しも比較的適当に処理しちゃっているし、それに、ちょっとむつかしいしね、…というようなで、費用効果が低いから、という判断だと思います。
     我々素人は、費用効果は目じゃありませんから、最後まで「麺帯が動かないように」ひたすらしっかり押さえる、ということだと思います。
     私も、特段のアイデアはありません。
     切り板と小間板の端をしっかりつけて、抵抗を増加させる…、程度でしょうか。

    2 指の位置
      高橋名人の指の位置は、写真を見ると分かりますが、
     ①全体に、小間板の北側寄り。
     ②人差し指と小指が小間板の北側の線にほぼ平行。
      になっています。
      切り込みの都度、麺帯は包丁に押されて北側に動こうとしますが、これを阻止しようということなのでしょうか。よくわかりません。
      よく、個々の指の力のことが話題になりますが、この話はあまり意味がないような気がします。。
     直接、指で麺帯を押さえるのなら、それぞれの指の力の入れ具合というのは意味がありますが、なにしろ、小間板という硬くて広い板が間に介在しているのですからね。
     それより、特定の場所を強く押すというのは、むしろ抵抗を減らすことになって害になるように思います。小間板に加える力を偏在させると、小間板が傾くことになり、麺帯との間の抵抗が減るからです。
     それよりも、板全体に均等に力が加わるようして、小間板の下面全体が麺帯に接するようにすることで抵抗を増加させ、麺帯を動きにくくさせる、という考え方の方が良いように思います。

     高橋名人の御言葉、
     「しっかり押さえる」
     だと思います。
     

  3. 佐藤 清治 | URL | -

    ありがとうございます

    体全体で押さえ、筋肉は微調整用 大変参考になりました。
    高鳥 薫ちゃんの写真、まさに物語っていますねありがとうございます。
     高橋名人も古河で見させていただいたのですが、見た感じ軽く押さえてるように見えました。
     引き続きご指南よろしくお願いいたします。

  4. 山崎 | URL | -

    そば切りを初心者のためのアドバイスをおねがいします。

    手打ちそばを始めたばかりです。
    そば切りはリズムだと書いてありましたが、どうすれば、綺麗に切れますか。
    簡単には言えないと思いますが。
    教えてください。

  5. ブログ主 | URL | G5Zeud3U

    切り

     切りは、そば打ち技術の中でも難しい部類だと思います。
     よく「鉢三年、延し三か月、切り三日」などと言われますが、とんでもない、と仲間内でもよく話します。

     切りは、鉢や延しと違って、理屈ではなく、脊髄反応で行うような繊細かつ瞬間的なワザですから、結局は繰り返し練習しかないように思います。
     正しい姿勢や、正しい包丁操作を一通り習ったら、後は「気持ちを込めた繰り返し練習」です。

     今でこそ上手に切っている人でも、最初はグタグタだったはずです。
     山崎さまは初心者だそうですが、数年続ければ必ず出来るようになります。

     蕎麦打ちの面白さは、このようにして難しい「技術」を(普通の我々でも)「身に着けることができる」という点にあります。
     体操の内村選手ほどの事は無理ですが、彼の感じた達成感の何百分の1かを感じることができる訳です。(でも、ゴールはなかなか見えません。それがまた良いのかもしれません。)

     頑張ってください。

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