体さばき - 身体重心のコントロール

2014年05月08日 14:30

 これまでは、身体重心の位置について静的に見てきましたが、次に、これを実際的な体の動かし方としてどのように生かしたらよいのか、ちょっと考えてみたいと思います。
 打ち台に向かって立つ時の構え方には、「切り」の場合を除き、次の2種類があると思います。
 「構え①」は、脚を左右に開いた形で、「構え②」は、脚を前後に開いた形になっています。

姿勢2種

 多くの場合、「構え①」で作業することが推奨されるようですが、体の重心のコントロールということで考えると、以下述べるように「構え②」が適当のように思います。少なくとも作業内容に応じて使い分けることが必要です。

 では、①と②について、それぞれの長短を比較をしたいと思います。
 次の2つのスポーツの構えが参考になります。

構え方2種

 左は、卓球のレシーブの構えです。脚を左右に開き、左右のどちらにでもサッと動けるようにしています。この構えから前後に動くことはほとんど想定されていません。球が正面に来たら、その場で打ち返すからです。仮に、前後に動けと言っても、この構えでは咄嗟に動くのは相当難しいと思います。前後への重心移動が難しいからです。

 右は、剣道です。前後の動きが素早くかつスムーズできるように、脚は前後に開かれています。剣道では、一気に前に出るのが通常ですから、左足で蹴って同時に右足を出すという感じになります。左右への移動は、通常ゆっくりと行われますから、この構えで対応できるわけです。

 以上のように、体を(=身体重心位置を)効率的に移動するには、移動する方向に脚を開く方が良いいということです。逆に、その直角方向へは移動しにくいということが言えます。
 ひるがえって、蕎麦打ちの作業を見てみますと、一般に左右開きにした方が良いとする指導が行われることが多いようです。その理由は、力が良く入るし、左右均等に加圧できるから、などとされていますが、必ずしもそうとは言えません。
 (水回しと切りを除く)蕎麦打ち作業では、体を前後に動かすことが多いですから、効果的に体重を使うためには前後に開く構えをもっと取り入れた方が良いように思います。


 以下は、やや蛇足かもしません。興味のある向きはどうぞ。

 下図は、「構え①(脚を左右に開く)」の場合です。

え①

 姿勢Aでは、重心(a)をできるだけ作用点に近づけて、大きな力(≒体重)が加えられるようにしています。
 次の姿勢Bは、その力を一旦抜いて、2回目の加圧に備えるために、腰を後方に引いて(=重心(b)を後方に移動させて)います。 (右端の図は両方の合成)
 このようにして、加圧の繰り返し作業が行われます。

 上のように「構え①」の場合には、「重心移動のために腰を後方に引く」という動作が必要になります。
 実際に、やってみると分かりますが、爪先側と踵側に力を入れて腰(この付近に重心がある)を動かさねばならず、やや不自然な動きと言えます。また、この際に、両手で反動をつけるという不都合な動作を加える場合があります。腰を後方に引くために、補助的に、手で台をグッと押すわけです。

 これには、次の2つ場面に不具合として現れると思います。

(1) 捏ねの場面で。
  よく見られる動作として、 姿勢Aで、(加圧を十分に行うために)体を十分に前方に預けると、元に戻せなくなるという恐怖心(?)から、早期に(加圧不十分のまま)、手の反動を使って体を後方に引いてしまう、というのがあります。この動きは、見た感じ、非常に不自然で、腕だけで押し引きをしているという風に見えます。こうなるのは、この構えでは重心位置をうまくコントロールできないからであると思われます。

(2) 丸出しの場面で。
  丸出しでは、均一な厚みと正円を作らなければなりませんから、微妙な力加減(体重の掛け具合)が求められます。熟達者では、左右開きでもそれなりの動作が可能ですが、初心者では、極端に言うとギッタンバッコンの動きになるため、丸出しの開始点や終了点に深い横溝を作ったりします。この原因の一つは、重心位置のコントロールが円滑にできないからです。


 次に、下図は、「構え②(脚を前後に開く)」の場合で、Rは右足、Lは左足を示します。(もちろん逆でも良い)

え②

 姿勢Aは、加圧をしているところです。図ではLが後ろに引かれていますが、Lがなければ全体としては「構え①」の姿勢Aと同じですから、これと同様の大きな力を発揮できます。
 姿勢Bは、2回目の加圧に備えて、脚Rの筋肉を使って体を後方に移動させたところです。このあと、脚Lを使って体を前方に動かします。脚の筋肉を使って円滑に体を前後する訳です。
 
 このようにして、加圧の繰り返し作業が行われますが、LとRを使ってステップを踏むようにすれば、更に効果的な運動になります。 (右端の図は両方の合成)

 上のように、「構え②」のポイントは、二本の脚の筋肉を交互に使って体を動かす(=重心を移動さす)ことから、「構え①」よりも、動きが滑らかになり、加えて、短い周期の動きも可能になります。これは、捏ねばかりでなく、丸出し、巻延し、本延しなど、力加減が重要な場面で特に効果的です。また、片足(図ではR)を軸にしてLを適宜前後させると、更に効果的になります。

 私たちは日頃、無意識のうちに体を使っていますので、重心位置を意識するというのは、ちょっと分かりにくいかもしれません。上の事を頭において、実際に体を動かして試してみてください。
 「構え②」の方が、本来的に、体を使いやすいと思います。
 場面、場面に応じて、応用すれば良いと思います。


 さて、余談ですが、上の話は飛行機の性能を示す「安定性能」と「操縦性能」の話に似ています。
 この2つの性能は、相反するものでして、安定性が強い機体だと操縦性が悪くなり、操縦性が強いと安定性が悪くなります。平たく言えば、どっしりしたものはパッと動かしにくく、転がりそうなものはパッパッと動かしやすいということです。

安定性操縦性2

 左の写真は、長時間決められた経路をゆったりと飛行する「無人偵察機」で、安定性重視で設計されています。 右の写真は、あくまで操縦性を重視した「戦闘機」です。

 蕎麦打ちに当てはめれば、安定性(ゆったり、どっしり)を重視すれば脚を横開き、操縦性(はやく、スムーズに)を重視すれば(片足で立つような)前後開き、ということになると思います。


 以上、一言で済むようなことを長々と書いてしまいましたが、日頃全く意識していない「身体重心」というものをあらためて勉強してみてなかなか面白いと思いました。ご参考に。

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