体さばき-身体重心について

2014年04月11日 12:49

 (※4月12日に後半部分を一部修正しました。)
 (※4月14日に図を一枚差し替えました。)

 「体重を上手に使いなさい」というのは、よく言われることです。
 筋力(腕力)を使っても、捏ねたり延したりできますが、体重を利用したほうが楽ですし所作も美しくなります。
 「体重を利用する」とは、体の重心(身体重心)を効果的に移動させるということに他なりませんが、まずはそのイメージを整理してみたいと思います。
 身体の重心について考える前に、モノの動きと重心との関係を見てみます。
 下の図は、床にティッシュペーパーの箱が置いてあるところです。
 そして、右側の図のように、床と接する面を「支持基底面」といいます。
 
1 箱
 

 次に、下図のように、この箱を指で押していきます。
 丸に十の字は重心の位置です。矢印は、地球の引力によって下に向かう力(重力)です。

2 箱と支持基底面

 ①は、押す力が加わる前の状態で、箱は安定しています。
 ②は、重力の線が支持基底面内に入っていますから、元に戻ります
 ③は、重力の線が支持基底面のぎりぎりの所に在る状態です。どちらに倒れるか分かりません。
 ④は、重力の線が、支持基底面の外に出ていますから、向こう側に倒れてしいます


 さて、次から、このことを(蕎麦を打つ)人間に当てはめて行きたいと思います。
 まず身体の重心位置はどこにあるのでしょうか。
 直立の場合で、下の図のように脊椎の最下部に当たる「仙骨」付近にあります。身長比で行くと55%付近です。
 姿勢が変わると、右の図のように重心位置は変化します。
 蕎麦打ちでは、主に前傾姿勢をとりますので、重心は、前傾姿勢のお腹の下付近になります。
31 身体重心

 次の写真は、柔道家で蕎麦打ち愛好家のT氏ですが、姿勢と支持基底面の関係を見てみます。
 ①は直立姿勢、②は前傾姿勢及びそれぞれの支持基底面を示しています。

姿勢人形

 ①では、支持基底面の真ん中に重力の線が通っていて安定した状態です。
 ②では、前傾をしたために、身体重心も体の前方に移動していますが、T氏は足が非常に大きく「支持基底面」が広いため、安定して立っておりますね。
 ②のような前傾姿勢のとき、よく言われるのは、「体重を掛けるようにしなさい。」ということですが、次に述べるように、前傾姿勢の作り方によって効果的に体重が掛る場合とそうでない場合が出てきます


 下の図は、直立の状態から単純に前傾姿勢をとった様子です。

41前傾AB

 前傾姿勢Aは、普通にお辞儀などをする場合の体の動かし方です。腰を後ろに引いて、重力の線が支持基底面(足元)から外れないようにして体が倒れないようにしています。身体重心は、体を丸めていますからやや前の方に移動しています。
 Bの姿勢は、日常生活では、通常ありません。腰を引くことなく、体を曲げていますから、重力の線は支持基底面を外れており、このままでは前方に倒れてしまします。

 上の2つの姿勢に関して、次の事が言えます。
・Aでは、体重を利用して、手でモノ(麺生地など)を押すことはできません。押すためには、体中の筋肉を駆使しなければなりません。往々にして、この姿勢に近い状態で作業をしている人がおられます。
・Bでは、前方に向けて倒れていますから、下に支えるものがあれば、そこに対して体重がモロに掛ります。
 このように、体重が利用できるためには、支持基底面から重心が外れていなければなりません。体感的には上半身を前方に預けるようなイメージです。
 「上半身を前方に預ける」‥これ大事です。


 さて、(繰り返しになりますが、)実際に作業台の前に立ってみます。
 下の図は、腰を引いて前に倒れないようにした前傾姿勢Aの場合です。

51前傾A


 前傾姿勢Aでは、上に書いたように重力の線は足元を通っていて、体は安定していますから、手を作業台に接した状態では体重を使用して台に力を及ぼすことは出来ません。
 ただし、実際の場合は、前傾姿勢A’のように、腹筋をはじめとする内側の筋肉を使用して、台を押さえつけるような動作をして、体重の代用をさせています。
 この力は筋力に依存する訳ですので、大きさも持続性もあまり期待できません。従って効果的ではありません。


 下の図は前傾姿勢B(前に倒れそうな姿勢)で、作業台に向かった状況です。
 右の図は、その模式図です。B1の所に体重(この場合上半身の重量)が掛り、B3が支点になって、B2の箇所で、捏ねたり延したりすることになります。
 見ての通り、この場合、腰の部分が支点になっていますから、良い姿勢とはいえません。(実際上もこのような姿勢を取ることはないと思います。)


 更に、力を大きくするために、下図のような前傾姿勢Cがとられることがあります。
 身体の重心C1の真下に向かって体重全体が掛ります。C3が支点となって、C2に力が加わることになります。
 単に「力を加える」という観点や、「見栄え」という観点からは大変効果的です。だからといって、C3を極端に後ろに下げれば良いかというと、作業の円滑性などの点で、必ずしも効果的とは言えないように思います。

71前傾c



 自然な姿は、下のような姿勢(前傾姿勢D)ではないかと思います。
 上の前傾姿勢Cに比べても大差はないように思われます。
 さらに、支点の位置を、図のように踵(かかと)にすると、効果的です。つま先で踏ん張ると前傾を止めるような形になってしまうからです。
 また、体を前後させる際に踵とつま先を交互に踏み替えるような感じにして体を動かすと効果的かもしれません。

81前傾d


 ということで、一度、前傾姿勢A~Dの姿勢を取りながら自分の姿勢をチェックしてみてください。



 以上、姿勢と身体重心の位置関係を静的に見てみましたが、実際には、動きのある捉え方が必要と思います。古武術や合気道などのような体の動かし方が参考になるような気がします。
 私たちは、体の動かし方について、通常はあまり意識をしていませんが、この際、、蕎麦打ちを通じて自分の体の動かし方を見直してみるのも一興かと思っています。



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