お見事!-「体さばき」と「包丁さばき」

2014年03月27日 18:45

 2月22日、23日と全麺協の3段位の認定試験が行われました。
 私は、例によってスタッフとして参加し、皆さんの技術や道具を見させて頂きました。
 今回は、最も重要な道具である「体」の使い方に関連して、ある受験生の作業振りをご紹介します。
 たまたまスタッフ作業の待機中の私の目前になかなか上手な方がおられました。
 次の点が、優れていると思いました。

1 体さばきが効果的で美しい。
2 諸要具の使い方が、円滑で無駄がない。
3 包丁さばきが、正確で早い。
4 製品の姿・形が均一で美しい。

 蕎麦料理の特色の一つは、他の料理と異なり、もっぱら体力を使う点にあります。
 更には、できるだけ短時間で終わらせるということが求められます。
 従って、ここで重要になってくるのが、効率的な体の使い方ということになります。つまり、最も重要な蕎麦道具である「体」をいかに効率的に使うか…、私の好きな言葉使いをすれば、いかに上手な「体さばき」をするか、ということになります。(前回、前々回の記事「作業台の高さ」もこの観点から重要です。)

 ということで、今回は、この受験生の作業振りを、「体さばき」に主眼を置いて見てみたいと思います。(一応、ご本人にはお断りをしましたが、不都合あればご連絡ください。)


写真①②
mst-1.jpg

 まず、作業台の高さに着目しますと、踏み台の高さは約5㎝(お風呂マット2枚)で、打ち台の高さが75㎝ですから、実効の高さは70㎝になっています。
 高さ加減は、この受験生の体との位置関係で見ますと、一般的な場合よりもやや低目の設定であると思います。
 ①の姿勢は、通常の安定した状態です。(これはどうでもよいことですが。)
 ②は、やや前傾姿勢で、重心位置はつま先のぎりぎり付近にあり、体が倒れるか倒れないかの状況です。前方に倒れないように、体をふとももの前面でわずかに支えているかもしれません。


写真③④ 捏ねを行っている写真です。
mst-2.jpg

 体の重心位置は完全に足元の範囲を外れており、効果的に体重(重力)を使った加圧の体勢になっています。ここまでするのが適当かどうかについて、異論があると思いますが、実効上も「見せる蕎麦打ち」の上からも効果的だと思います。
 ①は、ドウに体を預けている状態、②は反動を使って体を起こした後、加圧に入っていく段階の様子です。
 動画でないので、分かりにくいですが、体全体を使ってリズミカルに作業が行われておりました。


写真⑤⑥ 菊練りの様子です。
mst-3.jpg

 ⑤は、ドウを起こすところで、右足で床をキックして左足側に体の重心を移して行きます。
 ⑥は、左足で床を押しながら、体(の重心)をドウに向かって押し込んでいく様子です。
 前後に交互の動きをさせる場合は、足の構えも前後方向とするのが効果的です。(菊練りに限らず、丸出し等前後に交互の運動をする場合には、足を台に平行に構えるのではなく、このような構えをするのも良いと思います。)
 体の使い方が上手に行われていると思います。


写真⑦⑧ 地延し、丸出しです。
mst-4.jpg

 ⑦では腕の線が真っ直ぐになっています。
 腕の筋力ではなく、体重(重力)を利用して作業をしているという様子が分かります。このような体勢になるには、作業台の高さが適度に低くなくてはなりません。作業台の設定の大切さが、ここに表れています。
 ⑧でも、同様の状況が見て取れます。 
 作業台の高さが適切であると思います。


写真⑨⑩ 四つ出し、本延しの様子です。
mst-5.jpg

 ⑨では、腕の線から分かるように真上から効果的に加圧が行われています。
 前にも書きました(*)が、大きな力で回数を少なくするか?、小さな力で何回も転がすか? やり方は色々ですが、手早く処理するという観点から、前者(写真)のようなやり方が適当だと思います。((*)参考; 「四つ出しの、力の入れ所と入れ具合」後段部。) 
 
 ⑩は本延しの様子ですが、体の前傾状況と足元の位置との関係から、適切な加圧が行われています。これも、作業台の高さが概ね適切に設定されていることが大きな要素になっています。
 高齢者になると、この前傾姿勢が腰部への負担となりますが、腰部の筋肉をできるだけ使わないようにすることで、ある程度対応できる(**)のではないかと思います。

 (**)訓練を要すると思いますが、延す際には体を麺棒に預け、離れる際は反動を使用する…、というようなやり方を研究する必要があるように思います。

写真⑪⑫ 切りの様子と作品です。
mst-7.jpg

 ここまでの一連の作業のうち、私はこの切りの作業が大変素晴らしいと思いました。
 ポイントは、体勢の作り方です。
 左手の押さえは、腕の筋力を使うのではなく、体重を使って「骨で押さえる」という形になっています。左腕の筋力はあまり使われていません。左腕に力が入ると、包丁を操作する右腕とともに両腕に力が入ってしまい、体全体ががちがちになりがちです。写真のような形であると、右腕側だけに、力を意識する(コントロールする)ことで良いので、包丁を操作し易くなると思います。
 実際、そのような様子が下の動画から見て取れます。
 ⑫は出来上がりの製品です。申し分ない、と思います。


動画
 駒鳴りも交えながら早いリズムで切り進んでいます。goodです。教えて貰いたいですね。 
(この動画は、こちらのリンクからのみ閲覧できます。。)

 



 以上、かなりの個人的見方を交えた内容になりましたが、私たちは、最も重要な道具である「体」について、普段あまり意識していませんので、今回少し考えてみました。 この「体さばき」については、もう少し勉強してみたいと思います。

 この受験生と同様の技量を示す方はたくさんおられますが、今回、今私が考えていることとぴったり合致した方が、大会スタッフとしてぼんやり座っている私の前におられましたので、「体さばき」というテーマで写真を使わせて頂きました。
 それにしても、機能美とか用の美という言葉があるように、動作の良さと製品の良さとの間には大変強い相関があるようですね。
 



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