切りのリズム-駒鳴りを使ったアフタービートで

2013年12月04日 21:18

 切りは蕎麦打ち作業の中でもっとも単純な動作ですが、正確さが求められる一方で動きが微妙で、かつ早く、感覚的な部分が大きいので、切りの方法やコツを伝えるのは大変難しいと言えます。
 「リズムで切れ」とは、良く言われることですが、今回はその「リズムをとること」について少し整理をしたいと思います。
 「駒鳴り」というのは、切り終わった包丁を引き上げるときに、包丁が小間板の枕に当たる時の音です。
 この音は、「聞いていて心地よい」というだけの捉え方をされる場合が多いようですが、そうではなく、実は切りに必要な「一定のリズムを作り易くするという大きな役割」があるという風に思います。
 実際、軽快な駒鳴りをさせながら切りを行っている人は、リズムが一定しており、いわゆるリズムで切っているといって良いようです。
 
 このような「駒鳴り」の効用とは以下のようなことだと思います。

 まず、駒鳴りがない場合を考えてみますと、切りのリズムは次図のようになります。
   ippaku 
 上の図のように、二拍子の一拍目だけに音が来ます。
 一拍目のこの音は、麺帯を切るときのサクッという音と、包丁が切り板に当たる時のコトンとかゴトッとかいう衝突音の合わさった音になります。ここでは、これを「ズン」で表しています。
 調子が二拍子になるのは、包丁の動きが、下向きと上向きの交互の動きの繰り返しになるからです。
 一拍打って、一拍休み、という格好です。

 この譜面の、分かりやすい例は、子供の頃に最初に習ったカスタネットの叩き方です。
 1・2、1・2…と拍子を取りながら、1のところでカスタネットを叩く、あのやり方です。
   カスタネット

 この場合、一拍目だけ打つので、拍子の取り方自体は簡単だと思えますが、一拍目を正確に打ち続けるのは思ったより難しいのです。
 幼稚園児が「ぞうさん」をカスタネットを使って合奏する様子を想像して頂ければ分かりやすいと思います。

 「ぞうさん」を一拍目だけで合わせるのが難しいのは、曲がゆっくりしていて、間(ま)が開いているからです。
 従って、これを合わせ易くするには、曲を早く演奏して間を詰めるか、または、合いの手を入れるなどして間が狭くなるようにしてやれば良い訳です(音符を混みあわせる)。

 駒鳴りは、この後者に当たります。
 いうなれば、上の譜面の切りの音(ズン)に対して、合いの手を追加することで、正確性を高めようという訳です。
 譜にすると次のようになります。
 チャッというのが、駒鳴りです。
   nihaku.jpg

 ズン・チャッ、ズン・チャッ、ズン・チャッ…となる訳です。
 結果的に、間(ま)が狭まり、合いの手が入ることでリズム(音の間隔)が正確になります。
 このように、(限度はありますが、)リズムが細かくなればなるほど正確さは安定してきます。

 その好例は、「飴切り」です。
 切っているところを良く見ると、一拍目で飴を切って二拍目は空打ちにして合いの手にしています。(さらには、切り作業の合間に空打ちの音を入れることで、全期間のリズムの安定化を図っています。)
   


 さて、標題の「アフタービート(after beat)」というのは、ジャズやロックで、2拍目にアクセント持ってくるリズムの取り方を言います。(つまり、ズン・チャ、ズン・チャ…のチャを強めにする訳です。)
 
 蕎麦の切りの場合も、どちらかというとアフタービートのリズム感覚が合っているように思われます。
 二拍目の駒鳴り部分を強めにして拍子をとる訳ですが、我が倶楽部の重鎮である石〇さん(5段)は、これを「ン・パッ、ン・パッ、ン・パッ…」と表現しておりまして、まさに「アフタービート」の感覚です。

 ただし、ジャズやロックでは、演奏者の個性や曲想によって、そのリズムは微妙に異なります。
 つまり、必ずしも上の譜面で示したような単純な2拍子ではない、ということです。
 
 蕎麦打ちの場合も同様でして、その人の技量やその他の状況によっていろいろなバリエーションがあり得ますので、それぞれのリズムパターンを作る必要があるように思います。(上の例の石〇5段のリズムパターンもその一つです。)



 今回は、切りのリズムの中に「駒鳴り」を積極的に入れることで、切りのリズムの正確性が増すのではないかということを書きました。
 最近、訓練課題として取り入れて試行錯誤を始めたところです。
 皆様も、ご参考に、どうぞ。

 (次回は、その駒鳴りについて少し考えてみます。)




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