延し(6)-「ハの字」の意味

2013年10月05日 22:36

 麺棒の基本操法のひとつに「両手をハの字のように動かす」というのがあります。
 両手をすぼめるようにしながら麺棒を転がす操法で、その際の軌跡がハの字になります。
 蕎麦打ち作業の大きなテーマの一つは「加圧」ですが、この「ハの字」は適切な加圧を行う上で見逃せない技術です。
 まず、麺棒に掛る力を断面で見て見ますと、麺棒の転がし方と力の関係(手の位置)には基本的に次の3つの形態が考えられます。
【図1】真横(3時)から押す
 良く転がりますが、麺生地に加圧されませんので、これは意味がありません。
   ha-1.jpg

【図2】真上(12時)から押す
 麺生地に対する加圧力は極大になりますが、前進の力を発生できませんから、残念ながら転がりません。
   ha-2.jpg

【図3】斜め上(1時半付近)から手を滑らせながら押す
 麺生地に対する加圧と麺棒の転がりを両立させるためには、このように12時と3時の間に手を置くということになります。
 ただし、前に記したように、前進力(青色)が麺生地を強く引っ張ることになる場合があり、骨粗鬆症を招くことがあります。
   ha-3.jpg

 効果的加圧の観点から、望ましいのは、「図2のような状態で、なおかつ麺棒を転がせること」ですが、これを可能にするのが、「ハの字」です。
 「ハの字」が基本奏法として推奨される意味は、実はここにあるのではないかと思います。
 
 今回は、まずは、屁理屈は後回しにして実際の状況を紹介したいと思います。「加圧の効果」を念頭に置いて、改めて実際に麺棒を動かして体感してみてください。

 【図4】
 下の写真は、猫手の位置を上の図3のようにして、麺棒を前進させる状況です。
 ここでは、分かりやすいように、猫手を親指と人差し指で表現しています。
   ha-4.jpg

 前にも記したように、極端な場合には、摩擦抵抗のために麺棒が回転することなく、麺生地を力づくで引きずることになります。

 【図5】
 真上付近(12時ではなく、12時半付近)に手を置き、その手を擦(こす)り下ろすようにしながら、両手を左右から中央に向けて滑らします。
 麺棒を転がしながら相当大きな加圧をすることができる、というのが大きなポイントです。
   ha-5.jpg

 図4のイメージは下の図6のようになります。
 今にもちぎれそうな麺生地を表現していますが、これは極端な例です。ただし、麺生地の内部構造にはこういう傾向があり得るということです。
   ha-6.jpg

 下の図7は、図5のイメージです。
   ha-7.jpg

 加圧は、ほぼ真上(実際は、12時ではなく12時半付近)から行われています。
 ①のような状態において、両手を真っ直ぐ前方に移動させるのは困難ですが、両手を中央へ向かって滑らしながら、擦(こす)り下ろすことによって麺棒を転がす訳です。
 この辺の理屈を考えてみますと次のようになります。

 図8は、通常の猫手における力関係です。
 断面の麺棒を見る通り、1時半付近に下向きの力(緑色)を掛けると、麺棒は左の方向へ転がります。
   ha-8.jpg

 図9は、ハの字の場合の力関係です。
   ha-9.jpg

 12時半付近に力が加えられています。
 この場合、左側の図のように麺棒の中央に向けてL1とR1の力がかかります。
 ここが一つのポイントですが、力は左右から中央に向けて加えられますから、非常に大きな力が加えられても、麺棒がぶれたりずれたりすることはありません。いくらでも大きな力を加えることができる訳です。
 このことにより、L2・R2という擦(こす)り下ろす力が大きくなりますから、通常の猫手(図8)の場合と同じような大きさで、前方に転がる力が得られます

 下の図は、両手の軌跡を示しています。
 右の①に見るように、両手は、麺棒に対しては緑の矢印のように移動しますが、麺棒自体が前方に移動するため、麺生地に対しては赤の矢印のように、ハの字の軌跡を描くことになります。
   ha-10.jpg



 以上、またしても、冗長な整理の仕方になりましたが、一言でまとめますと次のようなことです。
 「ハの字」の効用というのは、麺生地に発生するストレスを比較的小さくしながら、大きな力をほぼ垂直に加えることができるという点にあると思います。
 したがって、「蕎麦打ち作業の大きなテーマは加圧である」とするならば、「ハの字」は大変重要な技術である、と言えるのではないでしょうか。 
 


コメント

  1. なるほど!
    このことを意識しながら、猫手をやってみたいと思います。

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