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延し(5)-猫手の力学(?)

2013年09月28日 15:29

 猫手について色々と考えていくと、大変興味深いですね。
 「四つ出し」の時も同じことを思いましたが、うまいことを考えたなぁ、と思います。
 パンや餃子の皮などを薄く加工する際に、棒状のものが使われますが、この時の操作は「平手」です。これが普通の発想ですし、ものが小さいですから、これで十分に対応できます。ところが、蕎麦やうどんのように大型になると、作業効率的に平手では十分に対応できません。そこで、打ち粉使用と組み合わせた猫手という技法の開発が行われたのではないかと思います。(私見です)

 猫手という技法自体は、もちろん、当時は試行錯誤によって開発されたものだと思います。これを力学的に正しく解析するとなると、(私の力では)ちょっと難しく、以下は、観念的な整理の仕方になっています。(タイトルをおこがましくも「猫手の力学」などとしてますが、乞ご容赦。)

 図1は、前回の記事で示した、麺棒と麺生地との間の力関係です。
 F2(青)という前進力が、いわゆる麺生地を引っ張る力となって、麺生地を骨粗鬆症状態にするということを述べました。
 これは、もう少し正確に描くと、F1(緑)の大きさ及び麺棒・麺生地間の摩擦係数に比例して発生している、R2(黄)という摩擦抵抗力によるものです。これがある種、悪さをしている訳です。
   nekoriki1.jpg
 

 猫手の力学を考えるときに、もう一つの力関係を考えなければならないと思われます。
 それは、下図2に示すような、手と麺棒との間に働いている力関係です。
   nekoriki2.jpg

 手は、図に示す形で麺棒に乗せ、接する箇所にF(赤)という力が加えられます。
 このFは、麺棒の曲面の接線方向への分力F4(青)と、麺棒の中心方向への分力F3(緑)に分けられます。
 そして、F4の反対方向には、麺棒と手の間の摩擦力に由来する摩擦抵抗力R4(黄)が発生します。この大きさは、麺棒の面に直角に働いているF3(緑)の大きさに比例します。強く押せば、その分、大きな摩擦抵抗力が発生するということです。その大きさはまた、麺棒の表面の滑らかさ(摩擦係数)にもよります。表面が滑らかだと抵抗は小さく、滑らかでないと大きくなります。
 この辺は、経験的にすぐに納得できます。


 普通、摩擦力は邪魔者であるとされますが、実は、これらの摩擦抵抗は、猫手による麺棒操作の上で大変重要な働きをしています。

 R4(図2)があることで、いわば、麺棒の表面に引っ掛かりが出来る訳ですから、Fを加えることができます。摩擦がなければ、するりっと手が逃げていきます。
 また、R2(図1)があることで、F4で麺棒が動くのをグッと阻止する働きをすすので、手を滑らせながら麺棒表面を擦(こす)り下ろすことができます。そして、この摩擦のおかげで連続的に麺棒は回転していきます(後述)。
 このように、麺棒表面の摩擦抵抗というのは、悪者ではなく、重要な役割を演じている訳でして、この辺が大変絶妙だと思うのですが、うまく説明するのが困難です。

 そこをなんとか、もう少し分かり易く描こうとすると次の2つの図のようになります。
 麺棒の、手が触れている部分は円弧ですが、この部分を拡大すると直線にみなすことができます。すなわち、図の三角形の斜面の部分が麺棒の曲面の一部に該当します。

 猫手では、この箇所に対して図3のように手が掛る訳です。
   nekoriki3.jpg

 さて、この状態で、①の位置から、Fの力を加えながら、斜面を擦(こす)り下ろすように手を動かす場合を考えてみます。
 徐々に、力を加えることでFを大きくしていきますと、それに応じてF4(青)とF3(緑)が大きくなります。また、R4(黄)もF3が大きくなるに応じて(また、摩擦係数に応じて)大きくなっていきます。さらに力を加えていくと、R4とF4は同じ大きさで増えていきますが、あるところでF4がR4よりも大きくなって、手は下に向かって滑り始めます。(実際は、この間はあっという間です。)

 これと同様に、F2とR2がFの大きさに応じて共に大きくなっていきますが、上記と同ような推移をたどり、F2がR2よりも大きくなる時期が来て、その時点で、三角形は左へ移動を開始します。

 図4は、移動した状態です。
   nekoriki4.jpg

 これはまた、移動してる状態も表します。
 この移動の現象は、連続的に発生しますから(次の説明)、三角形は左へ移動し続けます。ただし、動いている間は、摩擦抵抗は小さくなりますから(動摩擦係数)、比較的小さい力ですみます。

 実は、この三角形は(最初に仮定しましたが)、下図5のように麺棒の一部(赤色の三角形)です。
   nekoriki5.jpg

 図4と合わせて見て頂きますと分かりやすいと思いますが、三角形が左へ移動をすれば、下側から直ぐに新しい面が現れて来る訳ですので、再び図3の状態になり、同じことが繰り返されます。こうして、麺棒は押さえつけられながら転がり続けます。


 うまく説明するのが(私にとって)難しかったので、大変回りくどい内容になりましたが、大事なポイントは、意外や、摩擦力の存在です。
 できるだけ摩擦力は小さい方が良いのですが、かといって摩擦力が全く無ければ猫手は実現できません。もちろん、摩擦力が無限大であれば、棒はピクリとも動きませんから、ほどほどの摩擦力であることが必要です。


 以下の図は、その様子を示したものです。
 図6は、麺棒周りの摩擦力が零の場合です。

 例えて言えば、表面が氷で覆われているような状態ですが、現実にはありません。
 これは、いかにも良さそうですが、摩擦がありませんから、麺棒はスルスルと逃げるように転がって行くのみで、麺生地を加圧することすらできないと思います。
   nekoriki6.jpg

 次の2つの図(図7、8)は、摩擦が無限大の場合です。
 図7は、例えて言えば、ガラスとガラスがぴったりとくっついたような状態です。お互いをスライドさせようとしてもなかなか動きません。もう少し現実的な例では、麺棒に漆やウレタン塗料がしっかりと塗られているような状態で、その上に手が湿っていたりすると、麺棒がぺったりと手にまとわりついたような状態になります。
   nekoriki7.jpg

 下の図8は、麺棒の表面が荒れに荒れていて、まるで歯車同士が噛み込んだような状態です。場合によっては多少は回転するにしても、スムーズな操作は期待できません。
   nekoriki8.jpg

 ここまでに見ましたように、下図9のように、麺棒には若干の摩擦抵抗が必要なのです。(図は少しオーバーです。)
   nekoriki9.jpg

 このように、適度な摩擦抵抗があることで、連続的に(=円滑に)、麺棒を滑らせながら、麺生地を加圧していくことができるわけです。
 これが、猫手の(力学の)絶妙さ、ということではないかと思います。
  

 さて、その摩擦抵抗の程度ですが、図8のようにガサガサだったり、図7のように磨き過ぎて手に吸い付くようであってはだめです。
 手入れとしては、図7の状態になる数歩手前の、極々わずかなざらつきがある状態にしなければなりません。
 



 以上、今回の記事は、私たちが既に体感的には納得できることを、ことさらに屁理屈を付けた格好になりました。どうしても、ある程度、理屈として納得したかったものですから、こんな風になってしまいました。
 (でも、どっか違っているかもしれません。少し自信ありません。)

 次回は、以上を踏まえて、効果的な加圧という観点での麺棒操作について紹介したいと思います。




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