延し(3)-麺生地に掛る力と「後進の延し」について

2013年09月07日 15:41

 「延し」では、地延しを除いて、麺棒を使って作業を行いますが、以後何回かに分けて、麺棒を介した力の伝わり方、伝え方などについて整理をしたいと思います。
 図1は、猫手によって延しを行う際の、力の伝わり方の模式図です。
 麺棒で加圧(F1)をしつつ、麺棒を前方に進める(F1)必要があるので、手の力は斜め下に向かって加えられる(F)ことになります。
  F1

 F2の大きさは、麺棒と手の間の摩擦抵抗の大きさによります。
 摩擦が0で、スルスルスルと抵抗なしに麺棒が転がるなら、F2は0です。逆に、(極端なハナシ)摩擦が∞(無限大)なら、麺棒はピクリとも転がりませんから、あたかも麺棒を引きずるように押して行くことになり、F2は極大になります。
 実際は、多少の摩擦力を生じながら、シュルシュルという感じで麺棒が転がりますから、図のように若干の大きさのF2が発生しています。

 ここで、問題にしたいのは、このF2についてです。

 延しの作業では、麺生地の動きについて、次の2つのケースが観察されます。
1 麺生地が小さいなど、麺生地が打ち台の上を自由に滑ることができる場合
  図2は、丸出しなどの場合で、麺生地と延し台の間の抵抗が小さい時の、麺生地の動きを表しています。
  F2

  ②のように、打ち台との間の抵抗が非常に小さいので、F2によって麺生地全体が前方へ移動します。
  合わせて、F1によって麺生地は所望の薄さになります。

  図3は、その時の実際の状況です。
  手前側の打ち粉の状況を見ればそのことが分かります。
  このように、麺生地が動いた幅に相当する力が前方に向かって働いている訳です。
  F3

  以上、当たり前のことを書きましたが、問題は次です。

2 麺生地が大きくなる等して、打ち台との間の抵抗が無視できない場合
  図4は、本延しの際などのように、打ち台との間の抵抗が大きくなって、生地がスムーズに滑らず、前項のような動きにならない場合を示します。
  典型的な場合が、手前半分を巻棒で巻き取って延し作業をする場合です。図のように重しをのせて作業をしているのと同じになるからです。
  F4

  結果、麺生地に対して張力が働き、②のように骨粗鬆症が発症することになります。もちろん、この骨粗鬆の程度は、麺生地の状態やF2によって変わりますが、程度の差はあれ、相応の症状となっているはずです。

 図5は、前方(写真上は手前方向)に向かう力F2によって発生したひび割れ状況の例です。(この例は生粉打ちですので症状が顕著です。)
  F5
 ひび割れの現象は、裂けやすい縁辺部に発生していますが、中央部付近にも同様の力が働いているはずですから、麺生地の内部組織には同様の骨粗鬆化が進んでいることが想像できます。

 さて、上の第2項の対策ですが、「後進(※)で延す」という操作が効果的と思われます。
 前進で延したら、その直後には後進をしながら延す訳です。
 このことで、ある程度骨粗症を修復でき、よりしっかりした麺生地を作れるものと思われます。
  F6

 ②の模式図のように麺生地の内部の骨粗鬆症が改善されるはずです。 
  
 プロなどの熟達者の動作を見ていますと、「後進」による延しがこまめに行われているのが観察できます。
 その理由は、恐らく上のようなことだと思います。





※参考;
 「後進」:前進に対する言葉です。
 海上自衛隊OBとして、書きながら懐かしく思い出した言葉で、艦船を操艦する際に使われる用語です。
 下図は、速力儀(テレグラフ)です。左が商船のもので良く見られるものです。右が護衛艦のもの。
 商船のものでは、AHEAD SLOW 等と表示されています。 

  テレグラフ
 
 商船などでは、AHEAD(前進)、ASTERN(後進)等と英語を使うようですが、海上自衛隊の場合は、「前進原速(前進で巡航速力)」等と日本語で発唱します。更に、前進の区分には、商船にはない「第○戦速」という区分が設けられています。(写真では矢印が「四戦速」を指しています。)
 これらの高速力は、戦術運動の場面で使用しますが、この辺の速力になると艦全体の振動が増大して来るし、艦尾の白波が猛り狂ったようになります。まさに軍艦といった感じになります。

 話がだんだんずれていきましたが、下の動画は、2003年度の海上自衛隊観艦式の事前訓練におけるミサイル艇「はやぶさ」の高速航行の状況です。(当日は、大荒れでしたが、荒天時でも安定して航行していますね。)速力は「第○戦速」が下令されているはずです。
  

  ついでに当日の写真を2葉。
  はやぶさ 別のアングル
  別アングルはやぶさ
 
 この写真を見るといつも、大揺れに揺れつつ緊張感の高まっている艦内の様子に思いが及んで、グッときます。
 なお、この年の観艦式当時は民主党政権で、総理の鳩山氏は自衛隊最高指揮官の自覚はなく、観閲官としての職務を放棄し、菅氏に代行させました。でも、乗組員達はそんなことには関係なく、いかなる悪条件の中でも普段通りに訓練成果を展示している訳です。
 昨今の日本の情勢をこのはやぶさにダブらせて、「頑張れはやぶさ」、「頑張れ日本」と言いたくなります。

 参考部分が長くなりすぎました。m(_ _)m
 
 


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