「繋がる」とは「接着」である?(2)-紛体の科学

2013年08月19日 22:28

 以前の記事で、蕎麦が繋がるとか切れないというのは結局は接着の問題ではないか、と書きました。(「繋がる」とは「接着」である?
 これに関連して、先日読んだ本に大変参考になることが書いてありました。
 本は、ブルーバックスの「紛体の科学」です。

       hunntaikagaku.jpg

 その本の中で、粒子同士が付着する状態を次のように説明しています(22p)。
 (青字が同書からの引用部分です。)

 付着力の正体
 それではそもそもどうしてこの付着カというものが働くのだろうか。粒子と粒子を相互に引きつけ合っている力はいろいろあって複合的なものであるが、その中で主要なものは、表1、図3にも示したように、①分子間力(ファン・デル・ワールス力)②水分による毛管力③静電力の三つである。
 

     z3

 この3つの力というのは、色々なところで説明されていますが、この図が最も分かりやすいと思います。
 図1の②が、我々が関心を持つ部分です。「架橋液膜」という用語が、まさに言い得て妙です。
 下の表は、3つの力の説明です。

     h1
   
 表の中央部分に書かれているように、②は、「粒子間に付着した架橋液膜の表面張力による力」によるものです。
 この液が水のみの場合というのが、更級粉を水だけで打つ場合になりますし、水の粘度が(蕎麦のたんぱく成分によって)幾分高くなった場合というのが生粉打ちで、水の中に粒子同士を繋ぎ止めるかすがい状のもの(グルテン)が含まれる場合が二八蕎麦、ということになります。

 この中で分子間力は分子相互に働く力で物質によって決まり、他の環境条件によってはほとんど影響されない。そして粒子やその付着面の形状によっていろいろ変わるが、大体粒子間の距離の2乗から3乗に反比例する。つまり近づくと非常に大きくなるが、少し離れると急激に小さくなる近接カということになる。

 これは、いわゆる「万有引力」です。
 物質の質量に比例し、距離の2乗に反比例します。
 蕎麦の場合も、ミクロの世界(蕎麦の分子と水等の分子のレベルで見る場合)では、この力が作用しているはずです。
 どのくらいの影響があるのか、定量的にはよく分かりませんが、強く加圧して密着を良くすることで付着(繋がること)が強くなるものと思われます。
 
 毛管力は粒子間の架橋水分がある限り距離に関係ないが、少なくとも水分を介して粒子が接触しうる距離にある必要がある。そしてこの架橋液膜は実は水分量が少ないほど付着力が大きく作用するという特性がある。もちろん水分が無くなれば付着力は消えるが。

 少ないほど付着力は大きく作用すると言いながら、水分がなくなれば付着力は消える、と言っています。ということは、適度の水分で付着力が最大になるということです。
 極端に言えば、多量の水では、たぷたぷ状態になって付着どころではなく、0に近い微量の水では付着力は無いということです。図を眺めながら想像すれば、常識的な答えのように思えます。

 静電気力は…(この項、略)。 

 したがって、もし粒子と粒子を充分強いカで付着しあった、強い凝集体(ベレッ卜)をつくろうと思うと、まず粒子と粒子の接触面積を増やし、その上粒子同士をできるだけ近づけてやるのがいい。このためには粉体層を非常に強いカで圧縮して分子間力が充分な大きさになるまで粒子同士を近づけてやるというのがまず第一の方法。これは医薬品の錠剤化などに応用されている方法である。
 もうひとつのいわゆる造粒という方法の多くは、水分の力を借りる。粒子間に架橋水分を付着させ(つまり水分を添加して〉、しかる後に乾燥してやる。そうすると水分が減るに従って表面張力による付着力は大きくなるから、粒子は相互に押しつけあって接触面積を増やし、したがってまた粒子聞の距離を近づけ、分子間力が充分作用し合うようなところまでもっていく。そうするともう乾燥し切って水分がなくなってもお互いに強い凝集体を形成して溺れたりしない。これが遊粒工程でできるグリーンペレット〈生のペレット〉で、普通はこれをさらに焼結して完会な凝集体をつくるのである。


 後段に造粒について、書いてあります。
 蕎麦打ちの業界でいう造粒とは、少し違いますが、理工学でいう造粒とはこういうことをいうようです。
 蕎麦打ち業界でいう造粒とは、撹拌(水回し)によって、上でいう架橋水分の効果を使って、多数の粒子を連結させて行き、粒を徐々に大きな塊(かたまり)にしていくことを指しています。
 そして、次の凝縮体に近づけるには、蕎麦の場合は強い「加圧」によって行う訳です。


 最後に、
「繋がる」とはどういうことなのか、一昨年あたりから頭を悩ましておりましたが、なんとなくイメージが固まったような気がします。
 そして、このような、ミクロの世界の現象を思い浮かべながら作業をすれば、腕も上がる?上がらない?


 以下、戦闘記録です。
■ 繋がる (20110529)
■ 繋がる-2 (20110605)
■ 繋がる-2(続き) (20110618)
■ 「繋がる」ための「加圧」 (20110726)
■ 「繋がる」ための「加圧」(2) (20110906)
■ 小麦のグルテンの実際 (20120616)
■ 「繋がる」とは「接着」である? (20120622)


コメント

  1. ペー | URL | -

    小さい時の泥んこ遊びを思い出していました。

    泥と水を混ぜて手の中でぎゅうぎゅう圧縮してゴルフボール大の玉を何個も作る。

    水が多すぎると固まらない。少なすぎても固まらない。

    そして、適度な加水率と圧力で固まった玉を縁の下で何日もかけて陰干しするんです。そうすると、水が完全に蒸発してカッチカチの玉になっているんです。

    その玉を砂山で作ったすべり台で転がして、一日中暗くなるまで遊んだものです。

    子供の頃の泥遊びは、今のそば打ちに生かされるかな?
    適正加水で、ふんわり水回し、捏ねと延しで圧力をかけるようにしてみます。

  2. 管理人 | URL | G5Zeud3U

    土だんご

    思えばあの頃、紛体力学による造粒作用を応用して、土だんごを作っておったのですね。

     長い年月をかけて作り上げられた庶民の知恵とか伝統の技などというのは凄いと思います。
     そう考えると、改革とか、革新とか言って、古いものは壊すべきものであって新しいものが絶対的に良いのだという考え方がありますが、どうかなぁと思います。
     蕎麦打ちも数百年続いており、その過程で、幾多の蕎麦打ち達が我々と同じようなことを考えながら工夫をし、その集大成が一つの手順になって、今に伝えられています。
     まずはそれを尊重し、その上で色々なことを考えたいと思っています。
     (話がずれてしまいました。)

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