水回し(7)とドウ(※)

2013年07月16日 11:49

(※)ドウ=doughtと書きます。(こちら参照

 「水回し」の様子というのは、延しや切りと違って、主に内面的な現象ですから、状況を正しく把握してうまくコントロールするというのが大変難しいといえます。
 科学の力を借りなければならないところですが、能力も気力もありませんから、例によってイメージで整理をしてみたいと思います。(今回の内容は、前回の(6)と大体同じですが、ドウの状態も含めて整理し直してみました。)
1 そば粉の主体「でんぷん粒」
  以下の写真は、数年前の松本そば祭りの催事場に展示されていたそば粉の電子顕微鏡写真です。
  写真パネルにされていたものをデジカメで撮りましたから鮮明ではありませんが、イメージはつかめると思います。


  写真Aは、そばの実を割って、その断面を観察したものです。

  ph1
  
  写真の最下部を横に走るのはそば殻(果皮)の部分で、その上に見えるのが甘皮(種皮)の部分です。
  さらに、その上に水晶のような塊が集まっていますが、そばのでんぷん粒の塊です。
  そばの実の中には、このような形でデンプン粒がぎっしりと詰まっているわけです。


  写真Bは、上の写真の拡大です。

  ph2.jpg

  説明文のように、まるで筋子のような状態になっています。
  一粒の大きさは数ミクロン(千分の数ミリ)です。
  これを挽く(=砕く)ことで、そば粉にする訳です。


   写真Cは、挽かれたそば粉の拡大写真です。
   このように、ほとんどはでんぷん粒です。筋子状のものが砕け、個々の丸い粒と小さい塊になっています。

  ph3

  そば粉の成分組成では、多くがこのでんぷん粒ということになりますから、水回し作業においては、基本的には、このでんぷん粒に対して、いかに水を均等に付着させるかということがポイントになる訳です。

2 そば粉の主体「でんぷん粒」に「水(の一粒)」を合わせるということ。
  水回しでは、「粉の一粒と水の一粒とを合わせなさい」といいます。
  ここでいう「水の一粒」というのは、「粉の一粒」という言葉に対応させた例えであって、実際は、粉の一粒一粒にに対して均等に水が付着しているという姿を目指しなさい、ということだと思われます。


 図1は、そば粉のイメージです。主体はでんぷん粒です。

  f1


 図2は、水が、どぼっと加えられた状態で、左側がじゃぶじゃぶ又はどろどろの状態になっています。
  以後、この部分と右側の乾いた粉をぶつけ合うように動かして、水と粉が均一になるように撹拌をしていきます。その時の手や腕の動かし方はいろいろですが、要は、最終的に均一の小豆の状態ができればよいのです。(水回しの完成状態

  f2


 図3は、適正な水回しが完了したときの、小豆状の塊のイメージです。
 イメージとしては、水が媒介になって、粉が、軽く、くっ付きあっているだけの状態になっています。

  f3

この図では、粒を描くのが面倒だったので、粒の数が少ないものになっていますが、実際の小豆状の大きさの粒の様子を示すには、この図の2、30倍の大きさの絵を描いて、その中にデンプン粒をギッシリと描かなくてはなりません。

3 捏ね終わった「ドウ」のイメージ
  水回しが終わった段階では、上記のように、ふんわりと繋がった状態ですが、これを捏ねる(力を加える)と粒と粒の間が狭くなった状態になります。言い換えれば、密着が良くなる訳ですから、繋がりが良くなるということになります。また、でこぼこが均一化されますから、表面が艶やかになります。さらには、圧迫されることで、内部に存在していた水分が行き場を失って表面に滲み出てきます
  捏ねの方法として、「水を出すように捏ねなさい」というのは、このことを指しますし、実際に表面がしっとりしてきます。

 ドウの状態には、次の3つの形態があります。

 【形態1】水だけで打った更級そば
  湯捏ねをせずに、水だけで更級粉を使って打つと、粘着の要素がほとんどありませんから、水の表面張力だけで繋がった状態になります。水といってもある程度の粘度はありますから、でんぷん粒が相手であっても、形状を保つ程度には繋がることができるわけです。
  下の図は、そのイメージですが、水回しでほんわかと繋がっていた粒が、しっかり密着をして繋がった状態です。
  f4


 【形態2】生粉打ち
  更級粉はほとんどがでんぷん質ですが、二番粉、並粉と言われるものには甘皮等由来のタンパク質が含まれています。このタンパク質が、水に溶け出し、いわばタンパクの水溶液となって、粘性が増すことにより、でんぷん粒同士の粘着性が強まります。
 こうして、上の形態1よりも、繋がりは良くなっています。
 (下の図は、水(溶液)の粘性が高くなっている、というイメージです。)

  f5


 【形態3】小麦粉をつなぎに使ったそば
  形態1と2は、いうなれば水の粘度が異なるだけで、水(溶液)の粘性によって、でんぷん粒が引っ付きあっている状態であるといえると思います。
 小麦粉をつなぎとして入れた場合は、これらと状況が大きく異なり、グルテンという接着剤で、でんぷん粒を強力に繋ぎ止めているという状態になります。
 写真Dは、グルテンが形成された状況を示しています。(写真は、うどん?)
 写真に見える大きい粒は、小麦粉のデンプン粒で、白色のかきがらのように見えるものがグルテンです。

  ph4

 形態3のイメージとしては、下の図のようになります。
 グルテンが、忍者が着込んだ鎖かたびらのようになってでんぷん粒を繋ぎ止めています。

  f6





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