水回し(4)-立体的撹拌(あおり)

2013年02月03日 13:32

 撹拌の手の動かし方には、いろいろなやり方があります。鉢全体に対して両手を使って大きな円運動をしたり、鉢の左右半分ずつに対して小さな円弧の螺旋を描くような運動をしたり、様々です。どれが良いのか分かりませんが、いろいろなやり方が根強く行われているということは、結局のところ、大差はないということかもしれません。
 さて、撹拌の手法のうち、いわゆる「あおり」と言われているものがあります。上記のような水平方向の攪拌だけでなく、垂直方向の攪拌をしようというものです。今回このお話です。
 「あおり」は、水回しの期間中、連続して行われるのではなく、冒頭に書いた基本的な撹拌動作の合間に、時々行われるものです。
 操作の基本的なやりかたは、大体つぎのようです。

①鉢の中央部に縦長の山脈を作る。
②指をそろえた両手を、その山脈の底の部分に向かって左右から挟み込みむようにして差し込む。
③手の甲側に乗っかった粉をひっくり返す。

 屁理屈家の私としては、これまで、そうする意味が分かりませんでしたので、その派手とも思える動作を見るにつけ、単に乾燥を助長するだけではないかと考え、採用しておりませんでした。
 今回、水回しについて、いろいろと考えるうち、あおりの意味とは次のようなことではないか、と思い至りました。
 ポイントは、「ホシ」です。

 「水回し(1)」に書きましたように、水回しの目標は、「材料の粉とそれに加えられた所要量の水とが、できるだけ短時間で、全体として一様な小豆状の粒として合体した状態」にすることですが、一様にならず、水分が足らない粒が発生する場合があります。水分が少ないので色は白く、また、水不足でくっつきが悪いことから(大きい粒になれずに)、小さい粒になっています。鉱物の「長石(ちょうせき)」が砂状になったような姿であることから、「ホシ」と呼ばれています。水回しの後半に、鉢の底に現れてきます。

 下の図は、「水回し(3)」に述べましたが、小さいダマを作りながら、鉢底に向かって撹拌を進めている様子です。
  mizu4-1.jpg

 こういうやり方をする場合、上の部分(A層)が、最初にダマになっていますから、水分は上の部分に片寄っていて、底の部分(B層)には水分が少ない状況になります。(B層は水溜り状態に近いのですが、総量としての水分量は、ダマのあるA層より少なくなります。)


 そして、更に水回しを進めていきますと、下の図のようになりがちです。
  mizu4-2.jpg
 概ね水が回わり、粉が水を含み始めると、色合いは全体に暗い色調になっていきます。そして、最上部には少し大きめの粒(M)が転がり、その下の層に主体となる小さめの玉(S)が転がり、最下部の鉢の底には水が貰えていない、かわいそうな「ホシ」(SS)が転がっている、という訳です。


 なぜこうなるのでしょうか。
1 ホシが最下層に存在している原因は、「ブラジルナッツ効果」によるものです。
2 ホシが発生する原因は、その部分に水が配分しきれていないからです。(技量不十分?)

「ブラジルナッツ効果」とは、異なる大きさからなる粉粒体が入った器を振ると、最も大きな粒子が表面に浮き上がってくる現象のことで、我々も経験上良く知っている現象です。(詳しくは※)
 下の写真は、ミックスナッツが入った器に振動が与えられて、一番大きな「ブラジルナッツ」が、最上層に現れています。小さな粒のナッツは下層に集まりますが、これが「ホシ」に相当します。
  mizu4-5.jpg


 さて次に、ホシが発生する原因ですが、簡単に言うと水分の偏在です。
 そして、その状態は簡単に改善されません。
 水平方向に手を回転させる攪拌させていますから、底部に集まった「ホシ」は底を動くだけで、水分を保有している粒と交わることができにくい状況が続きます。それでも攪拌を続ければ、いずれは、大きい粒に吸収されますが、それには時間を要します。
 そこで、「あおり」の出番です。
 
 下の図は、「あおり」のイメージです。
  mizu4-3.jpg
  mizu4-4.jpg
 やり方としては、左右から、小さい粒の在る最下層に向かって、手を差し込んで行き、天地を入れ替えるように手を動かす、というものです。(細かい操作は言葉で説明しにくいので、この考え方をもとに、各自で、各自にあったやり方を研究して頂ければと思います。)

 これにより、「ホシ」を、比較的水分が多い粒に合併吸収させることができそうです。また、あおりで天地が入れ替わったらすぐに水を振って水分を供給するなどの処置をすれば更に良いと思われます。

 さて、ここまでのところで、「あおり」は「ホシ」解消のための一手段と位置づけましたが、「ホシ」解消のためには、あおりをしなくとも、2回目以降の加水時に上から降りかけるのではなく、水を鉢の底面に広げるように入れて、攪拌を行うなどして、「ホシ」部分に直接水を配給できるようにするという考え方もあります。

 また、以上の記述では、「あおり」を「ホシ」発生後の対策という風に書いておりますが、「ホシ」が顕在化する前に、水回しの早い段階で実施するというのが本当は正当かも しれません。つまり、攪拌を、「水平方向(従来の手法)+垂直方向(あおり)」という風に考え、水回しの目的である「‥(水と粉が)一様な小豆状の粒‥」を目指すために、水回しの早い段階から、攪拌を立体的に捉えるというのが良いと思います。





※ブラジルナット効果[Brazil nut effect]
異なる大きさの粒の混ざった容器を振ると,サイズの大きな粒が浮かび上がってくる現象。コーンフレーク類やミックスナッツの袋を開けると,輸送に伴う振動のためにブラジルナッツなど大きい粒が上の方に集まっている場合が多いことから,このようによばれている。大きい粒の方が重かったり,大きさが小さい粒とあまり変わらないようなときには逆に,大きい粒が下に沈む現象(逆ブラジルナッツ効果)も見られる。1960年ごろまでにはすでに化学工学技術者たちの間で知られていて,それ以来モデルはいくつも提案されているけれども,さまざまな現象を矛盾なく説明できるまでには至っていない。(p.4「粉粒体の混合と偏析における非平衡パターン」)

※(粉粒体の)偏析[segregation]
複数の異なる種類の粒が混ざった粉流体がゆすられたりかき混ぜられたりして流動するとき,それらの粒がもっている物理的性質の違いのために,容器内で成分が偏在する現象。特に粒子のサイズが異なる場合に起こりやすい(粒度偏析,サイズ偏析)が,密度や形状,弾性率,表面の性質など,粒子のほかの性質の差異によっても起こる。粉粒体の混合と偏析は工業などの応用にも直接結び付いた非常に重要な問題で,粒子動力学シミュレーションなどによる研究が盛んに行われている。だが,粉粒体のふるまいを記述するモデルを構築するのは非常に困難であり,偏析を理解する統一的な枠組はない。(p.4「粉粒体の混合と偏析における非平衡パターン」)
http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/magazine/parity-back/parity2001/2001_07/107_key.html#1





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