「繋がる」とは「接着」である?

2012年06月22日 22:16

 そばが繋がるとか繋がらないとかいう場合、一体どういう理屈になっているのでしょうか。
 よくわからないところが多いのですが、「接着」という観点からみると分かりやすいように思います。
「繋がる」というのは、前にも書きましたが、粉の粒子同士が何らかの力で連続的に結合している状態です。その辺りのことを何回か この記事あたりから整理しようとしているのですが、うまくまとまっていません。

 前回のグルテンの写真を見てもそうだと思うのですが、「接着」という観点から整理をするとわかりやすいように思えます。つまり、繋がるというのは粉粒子同士が接着することだ、というわけです。

 まず、接着についてですが、ここ(経済産業省HP)に大変わかりやすい説明があります。

 接着という現象は、見た目は簡単なことなのですが、実は大変複雑な現象だそうでして、物理的・化学的に完全に説明することが難しく、まだ解明されていない部分もあるそうです。
 下の図は、いくつかの接着の現象のうち、もっとも基本的なもので「機械的接着」といわれているものについての説明図です。
 img01_1.gifimg01_2.gifimg01_3.gif

 まず、液状の接着剤(左の図)が、「もの」の表面にある凸凹部分に浸透します(中央の図)。浸透は、ぐっと押さえつけることその効果が大きくなります。
 接着剤は、やがて乾燥して固まります(右の図)が、それによって「もの」同士が強く結合された状態になるわけです。(錨を打ったような状況になるので、アンカー効果ともいうそうです。)
 この「機械的接着」の例として、木材の接着に良く使う木工ボンドなどがあります。液状のボンドが、非常に細かい木の繊維の中に入り込んで、時間をおくと水分が飛んで、固まることによって接着をするわけです。

 前回の記事の写真にも見るように、グルテンは、まさにこのボンドに当たります。乾燥という過程こそありませんが、捏ねることで発生したチューインガム状の物質が網目のようになって、たくさんの粉粒子の間に入り込んで粉粒子をつなぎとめるわけです。また、乾燥した麺を観察すると、生粉打ちの場合に比べて、しっかり形を保っていますので、これはもう機械的接着と言ってよいかもしれません。

 さて、その他の接着の形態として「物理的相互作用」というとらえ方があります。
これは、ものとものが分子レベルで非常に接近した状態になると接着の状態になるというもので、分子間の引力(「分子間力」とか「ファン・デル・ワールス力」というそうです)によるものと言われます。

 下の図がその例でして、無数のガラスの分子と無数の水の分子が非常に接近することより、全体として強い引力が働き、結果として接着した状態になるというわけです。
          img01_4.gif

 上の図は、ガラス分子と水分子の分子レベルの引力ですが、水練り生粉打ちの場合の「繋がる」もこれで説明できるのではないかと思います。分子レベルのそば粉と水との距離が近いことで、お互いが引き合っている、ということです。前にも示した泥まんじゅう なども、同じような説明ができるように思います。
 そして、生粉打ちそばも泥まんじゅうも、乾燥して水が乾いてなくなれば、引き合うものがなくなりますから崩れてしまいます。

 実は、粉同士でも引力は働いていますが、粉同士の距離は水に対するものよりも圧倒的に遠いし、隣接状態の数も少ないので、接着するほどの力にはならない訳です。つまり、水だからこそ相手との分子間の距離が近くなり、隣接状態の数も圧倒的に多いので、総体としての引力も大きくなるということだと思われます。
 うまく説明できませんが、私の感覚では、水の表面張力(これも水分子同士が引き合う力によるものです)によって、つられるようにして粉粒子が引っ張られているというとらえ方が良いような気がします。
 「いわゆる水練り生粉打ちが繋がる」というのは、こういう状態であると思われます。(さらには、小さいながらも、水に溶け出るそば粉タンパク質による粘り(粘性)の効果がこれに相乗するものと思われます。)

 「繋がる」ということを以上のようにとらえれば、捏ね方にも相違が出てきます。
 割粉を使う場合には、グルテンが良く発達するようにしっかりと捏ねることが必要です。(また、その過程で加圧されますから、分子間力による接着効果もでてくると考えられます。)

 生粉打ちの場合は、その効果が全く期待できないので強く捏ねる必要はありません。
しっかり捏ねても良いのでしょうが、グルテンの生成という観点からは無駄なことですし、手間をかけることで不要な乾燥が進んだり、せん断力(引きちぎるような力)によって水分子と粉分子の親和性を損ねてしますことになる(かもしれない)、等の悪影響が出て来るかもしれません。
 生粉打ちの場合は特に、分子間の距離を近づけ分子間力を高めるため、圧力を加えるような意識で捏ねるのが適当ではないかと思われます。

 
 「接着」の観点から「繋がる」ことを考えてみましたが、これが正しいと言いたい訳ではありません。
 上の話の後半は、そばの分子と水の分子が接するミクロの世界の話ですから、自分でも、そうかなぁという思いもあります。なにしろ「接着の科学」自体が未解の部分があるということですから、上記はひとつの理解の仕方です。(ただ、秘かに、かなり合っているのではないかなどと思ってはいますが…。)

 「そばの科学」というべき分野も、また未解の部分が多いようですので、あとは、先人の教え等も含めて体験的、実証的なものとの突合せ等で確かめるしかないように思います。





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