小麦のグルテンの実際

2012年06月16日 17:53

 そばのつなぎに使う小麦粉のグルテンとはどういうものか、それはそば打ち工程の中でどのように生成されるのか、など等疑問に思っていました。
 グルテンについては、様々な図書やネット上にも記載があり、これらを元に整理をし、ちょっとした実験をしてみました。
 そばは、そば粉だけ(十割そば)でも「なんとか繋がる」ことが出来ますが、小麦粉をつなぎとして使うと、「しっかりと繋げる」ことができます。

 十割そばが「なんとか繋がる」のは、そば粉に含まれる水溶性のたんぱく質と加えられた水が合わさって、粘性のある「とろりとした糊状の液体」になるので、それが媒介となって、「なんとか繋がる」状態になるということです。
 極端な例えですが、これは、水にぬれた2枚の紙がくっ付いている状態です。ですから、ちょっとした力でも離れ易いし、乾けば自然に離れてしまいます。(このように水だけでくっ付いた状態というのは、ミクロ的にみると、液体の分子間引力(表面張力)によるものと考えられます。)

 一方、小麦粉をつなぎとして混ぜた場合、状態は大きく変わります。
 小麦粉に含まれるたんぱく質が網目構造を形成し、それが粉全体の結合を強くするからです。

 その網目構造を形成するのは、グルテンといわれる物質です。
 次の写真(電子顕微鏡写真)は、「小麦粉生地中の澱粉とグルテン」です。
    guruten1.jpg

 丸いのが小麦粉澱粉で、白い薄い繊維状の部分がグルテンです。
 写真では、グルテンが網で絡めたようにして小麦粉の澱粉粒をしっかりと結合させているところですが、そばの場合も、同じようにしてそば粉の澱粉粒(小麦粉よりもっと小さい。数分の一。)をしっかりと結合させる訳です。

 このグルテンは、最初からこの状態で小麦粉の中に存在している訳ではありません。
 小麦粉の成分を見ますと、主体になっているのは澱粉ですが、そのほかは水分が約15%、たんぱく質が6~15%、であるといわれています。更に、このたんぱく質のうちの85%が「グリアジン」と「グルテニン」といわれるものでして、この二つが、ある変化をすることでグルテンとなります。
 つまり、小麦粉の中のざっと10%を占めている、この二つのたんぱく質成分が、ある変化をしてグルテンになり、それが上の写真のような「つなぎ」として役目を果たすのだということです。

 前置きが長くなりましたが、では、蕎麦打ち工程の中のどの時期に「グルテン」になるのでしょうか、また、その実体はどういうものなのでしょうか。実証的に観察してみました。

 上に書いたように、小麦粉の中にグルテンという網目構造のものが最初からあるのではありません。
 グルテンが生成されるためには、小麦粉に、「水を加え」、「捏ねる」ことが必要です。
 したがって、水回しの段階では、グルテンは生成されておらず、また、一部に言われる寝かせることで(時間を置くことで)グルテンが生成されるというものでもありません。生成の条件は、「水を加えること」、「捏ねること」の2つです。

 下の写真は、各々が約100gの小麦粉です。
     0610-1.jpg
 Aは水回しだけをしたもの、Bは約30回捏ねたもの、Cは約100回捏ねたものです。今回は、AとBだけでも良かったのですが、捏ねの回数の影響を見るためにCを追加しました。(先輩などから「力を入れてしっかり捏ねなさい」と言われるけれども、うどんの場合には「捏ねすぎるのは味を損なう」といわれています。どっちが本当でしょうか。そのヒントが得られるかもしれないということで、Cのケースを作りました。)

 さて、まずグルテンの抽出方法についてです。
 上のA,B,Cをぬるま湯の中で、ほぐすように揉み続けますと澱粉成分が湯の中に溶け出て行きます。小麦粉成分のほとんどが澱粉で、グルテンは10%前後ですから、大部分は溶け出して、残ったものがグルテンということになります。

 下の写真はBをほぐしたもので、指先に持っているのが抽出されたグルテンです。
 ボールの中の白く濁ったものが、澱粉が溶かしだされたお湯です。
      0610-2.jpg
 お湯を二、三回変えながら揉んだりほぐしたりしているとこうなります。
 噛んだチューインガムみたいな感じです。

 下の写真は、同じようにしてA(水回しだけ)をお湯の中で溶いたものです。
 Bのときのような、モノは抽出されず、全体がお湯に溶け出して行きました。
     0610-3.jpg

 元のA,B,Cとの対比で示すと次の写真のようになります。
 a,b,cは、最初の写真で示したA,B,Cの半分の量を使ってお湯で溶いたものです。
     0610-4.jpg

 aは、更にほぐしていけばお湯のなかに溶け出してしまうと思われます。(そこまでやりませんでした。)
     0610-6.jpg

 bは、ごらんのとおりまさにガムのようです。
 ここでは、塊になっていますが、こうなる前には網目状になっているわけです。
     0610-5.jpg

 ついでに、100回捏ねをやった「c」ですが、指先でつまんだ際の感触がやや硬いかな、と思える程度で、顕著な差はないようでした。
 捏ねる回数をもっと増やしたた場合にどうなのか、また、実際に食べてみて歯でかむときの感触ならどうなのか、については不明です。

 以上、やや適当に行った実証的観察です。

 この範囲で、次のようなことが言えそうです。
1 水まわしでは、グルテンはほとんど出来ない(※1)。
2 捏ねることでグルテンが生成される。
3 捏ねの回数は多ければ良い、という訳ではなさそう(※2)。

※1:生成に必要な条件である「捏ねる」が無いからですが、粉が動かされる過程で多少の力が加わっていますから、少しはグルテンが出来ているかもしれません。
※2:うどんの場合は、過度の捏ねは味を悪くするといわれているます。






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