茹での時間(3)

2012年02月03日 20:45

 そばもうどんも、主体であるデンプンが、加熱によって変化していきます。
 知りたいことは、どの状態になった時が最も美味しいか、そしてそれは何時なのか、ということなのですが、ずばりこうだと言うのはなかなか難しいし、もともと好みの問題ですから、ほんとはそれぞれが好きにすれば良いのです。(‥と、そこまでいうと身も蓋もありませんが。)
 ここでは、これまでの行きがかり上、この辺の様子をもう少し整理してみます。
 水分と加熱によって、デンプンは次のように変化するそうです。
 ブログで、「馬鈴薯デンプンの糊化」の様子を示す電子顕微鏡写真がありました。(「ブログ de 食品学“2011”」http://blog.livedoor.jp/foodatoz/archives/50380580.html)
    denpun.jpg

 上のブログでは、次のように説明されています。(【引用】。以下同じ。)
【デンプンは水溶液中で加熱することにより糊化する。デンプンを水とともに加熱するとデンプン粒子が膨潤し大きくなる。ついで、粒子に亀裂が生じ、最終的には粒子が壊れてしまう。】
 写真を眺めると、デンプン粒が水と熱によって膨らんで行き、遂には破れてどろどろになる、というイメージです。このあたりの状況を「糊化」というようです。

 小麦粉については次のような状況のようです。(http://www.seifun.or.jp/kisochishiki/kagaku.html「小麦・小麦粉に係る基礎知識(財)製粉振興会ホームページ」)
     nama-koka denpun
 左は「生の小麦でんぷん」、右は「糊化した小麦でんぷん」です。

 左の写真の大きい玉がデンプンです。あたかも水をぱんぱんに入れた風船のような感じになっています。これが、右の写真では破れて変形をしています。
(なお、左の写真では白色の小さな玉が見えますが、これはグルテンの元になる蛋白成分と思われます。)

 上の例で見るように、水分と加熱によって大きな変化があるわけですが、我々の関心は、繰り返しになりますが、その時間プロセスです。茹で時間の経過とともに、いったいどういう変化をするのでしょうか。

 その辺のところを、もう少しくわしく書いたサイトがありました。
(http://www.flour.co.jp/05_flour/flour6.html (4)小麦粉の話 木下製粉株式会社)
 要点を抜粋しますと次のようです。

【でんぷん粒はある温度で水を吸収してふくらみ始めます。加熱し続けると、でんぷん粒は更に膨潤を続け、吸水することにより体積は数倍にふくらみます。そして膨潤が極限に達すると、粒の崩壊が始まり、分散してしまいます。つまり、膨らませすぎた風船が破裂するのと同じです。でんぷん粒は加熱することにより、吸水→膨潤→崩壊→分散の過程をたどり、この一連の動きがでんぷんの糊化現象といわれるものです(図参照)。】

       dennpunnohenka.gif

 粘度は、「膨潤」の段階で極大になり、デンプン粒がはじけた後は下がり始めます。(これを「分散」というらしい。)
 この粘度の変化を数値として測定したデータが次の図です。
       untitled.jpg

【最初に小麦粉65gと水450mlを加えて、攪拌した懸濁液を攪拌しながら徐々に温度を上げていきます。温度が60℃くらいになると、でんぷん粒が急激に膨張するので、溶液の粘度が増加し、ここが糊化開始点とよばれています。更に攪拌しながら加熱を続け、94.5℃まで上昇すると、今度はこの温度を保ったまま、攪拌を続けます。暫くすると、膨潤したでんぷん粒が崩壊するために、粘度の低下が始まります。つまり、今までねばねばだったものが、さらさらになるわけです。(この現象をブレークダウンといいます。)】

 上の説明では、「94.5℃まで上昇すると、今度はこの温度を保ったまま、攪拌を続けます。暫くすると、膨潤したでんぷん粒が崩壊するために、‥」となっています。
 つまり、徐々に温度が上がっていって、100℃近くになった途端にデンプンが崩壊して糊化状態になるのではなくて、「暫くすると」膨潤したデンプンが崩壊して‥‥、ということです。
 前回使用した図(図4~図5)の状態で、暫く待たねばならないということです。
      men ondo

 ここまでは、小麦粉デンプンについての話ですが、蕎麦ではどうなるのでしょうか。
 残念ながら、そのものずばりのデータはここにはないようですが、次の図が若干参考になるようです。
         untitled2.jpg

【上の図は小麦と他の穀物に含まれるでんぷんの粘化曲線の比較です。これをみると小麦でんぷんは、他のでんぷんに比べると非常にゆるやかな粘度曲線を描くことがわかり、これが小麦でんぷんの特徴といえます。逆にタピオカでんぷんは糊化開始温度が低く、これは早く糊状になる、つまり調理時間が短くなることを意味します。最近はタピオカでんぷん入りのうどんも時々見かけますが、これからわかるように小麦粉だけの場合に比べてゆで時間が短縮され、作業効率があがるのが使用される理由のひとつです。】

 つまり、小麦粉デンプンでは、その性質上、糊化するのに時間が掛かるが、タピオカなどでは早く糊化するということで、デンプンの種類によってそれぞれに異なるということです。
 実際上、蕎麦では数十秒、更科などでは十数秒という早さで糊化が行なわれますね。
 この差というのは、デンプンの性質の差かもしれませんが、デンプン粒の大きさの差があるのかもしれません。(小麦粉デンプン粒は直径20μ程度、蕎麦粉では5μです。)


 以上、へ理屈で茹での最適時間に迫ろうとしましたが、結局は経験値によるのが適当、ということのように思います。実際には、これを基準に、太さや火力などによって時間を変え、更には、自分の好み(考え)で決めればよろしいということですね。(苦労した割には、全くしまらない結言になりました。)
 


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